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中学校の「技術」で教員不足?文科省が調査を予告

こんにちは!毎日の作業は、文部科学省の最新情報からスタートする、みんなのコード政策提言部の田嶋です。

私の日常の欠かせない習慣には、高校の情報に焦点を当てた特設サイトの確認も不可欠です。

ところで、その特設サイトには「高等学校の情報科目の指導体制をさらに強化するための方策(通知)」(以降、通知)が掲載されていますが、お気づきでしょうか?

この記事では、この通知について、「一般にはそれほど注目されていないけれども、すごく重要な内容」を、皆さんが理解しやすい形で解説してみたいと思います。

本日の記事でお伝えするポイントは

  • 文科省が高校の「情報」の指導体制の強化に向けて動きはじめた
  • 中学校の「技術・家庭」(技術分野)においても、調査実施の予定が発表されている
  • 技術分野の教員が不足しているようで、原因として教員育成機関に問題がある?

の3点です!

高校「情報」の教育体制を強化しよう!

昨年11月15日に発出された通知には、分かりやすくいうとこんなことが書いてあります。

  • 公立高校で情報科を教えている教員4,756人のうち、796人(16.7%)は「正規の」免許状を持っていない教員だった
  • 文科省が、教員の配置に責任を持つ教育委員会に対して、この事態を改善するための計画書の提出を求めた
  • 計画がきちんと実行されれば、2024年度には解消される見込み(進み具合を都度、文科省が点検する予定)

ここまでは昨年11月に、いくつか報道もされました。

「情報」正規免許なし、公立高16% プログラミングやデータ分析を学ぶ高校の必修教科「情報」の指導体制が整っていない。公立高校の担当教員4756人のうち、202 www.nikkei.com

高校の情報科教員、17%が情報の正規免許なし 改善迫る文科省:朝日新聞デジタル  全国の公立高校で、教科「情報」の正規免許を持たずに情報の授業を担当している教員の数が、今年5月1日時点で計796人だった digital.asahi.com

「正規の」免許状を持っていない教員とは、臨時免許状の授与を受けた者と、免許外教科担任の許可を受けた者のことを指しています。

前者は、普通免許状を持っている人を採用することができないとき、後者は、ある教科を教えるべき教員を採用することができないとき、例外的に認められる制度です。「情報」の普通免許を持っている人が採用できないので、臨時免許状を授与します、あるいは他の教科の教員が担当します、ということですね。

文科省も、高校情報の支援をするよ

この通知には、情報科指導体制の充実のために、文科省ができる支援についても言及されています。

  • 情報の普通免許状を持っていない教員に対して、認定講習等を教育委員会で開設するなら、その経費に活用できる委託事業があります
  • 情報 Iのポイントをわかりやすく解説した授業動画を作成して順次公開します!
  • デジタル人材の育成・確保の関係者(大学、高専、専門学校、産業界など)が協議する場の設置に対して支援します

なるほど、国としても指導体制を充実させるために頑張らねばという姿勢が見られます。実際、11月以降、多数の解説動画や研修会情報が公開されています。

高校だけが問題ではない?

高等学校情報科に係る指導体制の一層の充実について」というタイトルの通知であるにも関わらず、よくよく見ると「その他」の項目に「中学校等における対応」についても言及されています。

今回、高等学校情報科において顕在化した指導体制の課題については、類似の問題が中学校「技術・家庭科」(技術分野)でも生じていると考えています。我が国全体の喫緊の課題であるデジタル人材の育成に向けては、初等中等教育段階を通じた指導体制の改善及び教師の指導力向上を加速させていく必要があると考えており、今後中学校等についても、今回の高等学校における対応を参考としつつ、詳細な実態調査を実施し、改善方策を講じたいと考えていますので、あらかじめ申し添えます。

簡単に言い換えると

高校と同じ問題が中学にもあるはずなので、今後実態調査を実施し、

改善方策を講じます。それまでにしっかり対策しておいてください!

ということです。

中学校でも技術分野の教員が足りない

以前から、中学校「技術・家庭科」技術分野(以下、技術分野)の正規の免許状を持った教員が足りないということは様々な面で言及されています。

2018年の教育新聞には以下のように報じられています。

2016年度の中学校での各教科別免外許可件数は、

▽国語 319件
▽社会 297件
▽数学 417件
▽理科 198件(中略)
▽技術 2,146件
▽家庭 2,181件
▽外国語 188件――で、実技教科だけで全体の約8割を占めている。中でも、技術、家庭が特に多い。全日本中学校技術・家庭科研究会が実施した調査によると、2017年度に和歌山、徳島、大分、宮崎の4県にある半数以上の中学校において、技術を免外や臨免の教員が指導していた。和歌山、高知、宮崎の3県では、技術の免許保有者よりも、免外や臨免で教えている教員の方が多かった

教育新聞「免許外教科担任の実態(3) 中学校「技術」で免外が多い背景とは」(2018.7.2)をもとに作成

免許外教科担任制度の在り方に関する調査研究協力会議「教科別の許可件数」(2018)より教育新聞作成

実際、2022年4月採用の東京都横浜市の教員採用試験結果を見ると、当初の想定通りに採用が進んでいない様子が見受けられます。

【東京都】採用見込者(募集)数:30名、名簿搭載(最終合格)者:18名

【横浜市】募集数:約15名、最終合格者:9名

教員の養成機関に課題が?

このような教員不足については以下のような指摘があります。

現在、中学校技術科(原文ママ)でも、教員不足や免許外教員の問題が深刻になってきています。この背景に、技術科の教員養成から手を引き始めた教員養成大学が増加してきていることがあります。

河合塾「中学校技術科と高校情報科のよりよい連携を目指して」

文科省の「中学校・高等学校教員(技術・工業)の免許資格を取得することのできる大学」によると、技術分野の、一種免許状の免許資格(以下、免許資格)を取得できる大学の数はわずか63

中学校・国語科は200以上、英語科は300以上の大学で取得可能であり、上記表で最も免外許可件数の多い「家庭分野」も101の大学で取得可能であることを考えると、技術分野が群を抜いて少ないことが分かります

地域別に見てみても、技術分野の免許資格が取得できる大学がない都道府県は6県で、全教科の中で最多です(次点で家庭分野3県、音楽科2県、美術科・保健体育科各1県)。

また、教員養成の重要な機能を担う44の国立の教員養成大学・学部では、基本的に全ての教科の中学校免許資格が取得可能ですが、技術分野と美術科のみ取得できない大学が存在します。

技術分野は、中学校の中で最も免許資格が取りにくい科目と言っても過言ではないでしょう。

解決策はあるのか?

課題があるのは分かった、でも、何をすればいいの?何ができるの?という議論を次にしたいのですが、やや文字数が多くなってきましたので、続きは次の記事に綴ろうと思います!

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