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中学・高校の学びが広がる!アラムコSTEAMチャレンジにおける教材選定の裏側

~課題解決学習から探究活動まで、幅広く活用できる4つの教材~

みなさん、こんにちは!みんなのコードで中学校の担当をしている千石です。
私はみんなのコードで主に中学・技術科の教材やカリキュラム開発、そして先生方に向けての研修などを担当しています。元々は、東京都の中学校で技術・家庭科技術分野の教員として11年間勤務していました。

今年の7月より、アラムコ・アジア・ジャパン株式会社様の助成のもと実施しているアラムコSTEAMチャレンジ(以下、アラムコSC)について、既にいくつかの記事でご紹介していますが、今日は全国の中学・高校で活用していただく教材やツール選定の裏側についてお話したいと思います。

中学・技術科におけるハードウェア教材の必要性

今回、アラムコSCを企画・実施するにあたり、教材の選定についても社内でじっくり議論を重ねました。そこで議論の元となったのは、以前みんなのコードが行った実態調査でした。

私たちが2021年、2023年に行った実態調査では、小中高でのプログラミング教育の課題が浮き彫りになりました。この調査の中で、中学技術の「D(3)計測・制御の技術」を指導する際に課題として挙げられた「授業展開の難しさ」「教員の専門性の不足」「教材が不足している」「教材選定の難しさ」に注目しました。


教科の専門性という視点で見ると、理科の先生なら化学・物理・地学等、社会の先生なら地理・歴史・公民等、仮に自分の(大学時代の)専門分野と違っても学校では教えることになります。
同じように、技術科は、材料と加工、エネルギー変換、生物育成、情報の4領域があります。大学時代に「材料と加工」の内容を専攻していても、教壇に立てば情報やプログラミングを指導する必要があるので、その教材研究や準備はかなり大変です。特に、情報やプログラミングを大学で専門で学んでいない先生方に、今の指導要領の内容を授業してもらうには教材や指導計画等の何らかの支援がないと難しいと思います。

また、D(3)計測・制御のプログラミングによる問題の解決(以下、計測・制御)では、センサやモータなどの入出力が必要になるので、何かしらのハードウェア教材が必要になってきます。いざ自分の勤務校で「実践したい!」となった場合、ハードウェア教材がないと授業することができません。

保護者の皆さまから集金する教材費で教材を購入する方法もあるのですが、ライントレーサーのようなプログラミング学習教材セットは指導の容易さや完成度の高さ等のメリットがあります。一方で、係活動の改善や地域の防災活動など、身の回りや地域の課題解決といった幅広い課題解決学習には不向きです。

そこでアラムコSCでは、ただプログラミング学習に留まることなく、幅広くSTEAM学習に活用できる教材を選定しようと考えました。

教材選びの条件

そのため、教材選びをするにあたり、より広く課題解決などに活用できるセンサ・アクチュエータを有する教材を選定しました。また、中学校技術科や高校情報で扱う学習内容に対応しつつ、総合や探究の学習でも利用できる拡張性も考慮しました。また、先生方の指導に幅を持たせるために、複数の教材から選べるようにしました。

教材を選定するにあたってのポイント

  1. 指導者の技量、および生徒の実態に応じて内容に幅を持たせられる教材
  2. 中学校でD(3)計測・制御だけでなく、D(2)双方向プログラミングも学習できる教材
  3. エネルギー変換や生物育成の単元でも利用可能な教材
  4. 高校での利用も考慮し、ブロックプログラミングだけでなく、テキストプログラミングでもプログラミングできる教材
  5. WebAPIや画像認識AIなどの発展的な学習が出来る教材
  6. 教材のメンテナンスや管理に手間がかからない教材


選定した4つの教材

今回は中学・高校の先生に選んでもらうために、幅を持たせました。それぞれの教材のポイントを少しご紹介します。

  • タコラッチ
    AkaDako探究ツール同様Scratchでのプログラミングと探究ツールより安価な分、外付けセンサを追加してより幅広く課題解決にチャレンジできる教材です。
  • AkaDako探究ツール
    Scratchでのプログラミングと扱いやすい、カラフルな筐体。内蔵センサやLED、振動モータなど豊富な入出力装置を有し、本体1つで様々なプログラミング学習を行うことができます。
  • アーテックロボ2.0
    Scratchベースのプログラミングツールと、様々な筐体を生徒自身が組み立てるブロックで構成されているので、ブロックで車を作ったり、扉を作ったり…といったハンズオン活動を重視したい学校向けに選びました。
  • M5GO
    ネットワークの設定が少し難しいのですが、豊富なセンサやPythonによるプログラミングをはじめ、高校での活用を想定し、高度な学習にも対応できるものを選定しました。
テキストプログラミングブロックプログラミングセンサ組み立てブロック
AkaDako探究ツール内蔵のみ(増設可)
タコラッチ
アーテックロボ2.0
M5GO

これから始まる授業実践

アラムコSCの採択校は41校あり、それぞれの学校で実践が本格的に始まりました。応募いただいた先生方に希望する教材を選んでいただく方式を取ったのですが、予想より偏りもなくきれいに分かれました。

フォームの回答のグラフ。質問のタイトル: 使用したい教材を、メニューから選択してください。
。回答数: 47 件の回答。


私たちの教材選定があながち間違っていなかったのではないか…と思い、安心しました。

一方、今回のプロジェクトでは初任者の先生も数多く応募いただいています。年度の途中から新たな教材に取り組むのはベテランの先生でも大変なことです。そういった先生方も引き続き支援していきたいと思います。


今回ご支援いただいたアラムコ・アジア・ジャパン株式会社は、サウジアラビアの総合エネルギー・化学企業アラムコの日本現地法人です。
◉アラムコ・アジア・ジャパン:Where Energy is Opportunity | アラムコ・ジャパン (aramco.com)

◉アラムコ:Where energy is opportunity | Aramco

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