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海外ゲストが気づいた日本の授業の魅力

海外ゲストが気づいた日本の授業の魅力〜Asia Pacific Computer Education Conference②〜

こんにちは、みんなのコード代表の利根川です。みんなのコードは日本国内で情報教育の普及を推進しているNPO団体です。このたび、2024年11月20日から11月23日まで「Asia Pacific Computer Education Conference」と題し、14か国から32名の海外ゲストを迎え、情報教育の未来について議論する会議を実施しました。

今回はその中編として、2日目と3日目の学校現場視察の様子をお届けします。

カンファレンス2日目は、海外ゲストの皆さんと日本の学校現場を視察する日でした。まずは新渡戸文化学園中高へと向かいました。

新渡戸文化学園での授業見学

2日目の午前中、海外ゲストの皆さんと新渡戸文化学園中高を訪問しました。勝田先生による情報Iの授業では、データの利活用をテーマにした取り組みを見学しました。

生徒たちはGoogleフォームで収集したクラスメイトへの質問データを集計し、スプレッドシートを用いて分析するという実践的な内容に取り組んでいました。1人1台の端末を使い、身近なデータを活用する授業風景に、ゲストの皆さんも興味深々でした。時間の関係で授業の前半しか参観できなかったのがとても惜しかったですが、参加者からは「先生の授業のアイディアは、生徒に無理やり決まった課題をやらせるものではなく、彼らが主体的に考える力も育てられる点で優れていると思った」「生徒自身がデータ分析を自分で進められていて驚いた」などの声が寄せられました。

授業見学に加え、VIVISTOP NITOBEの分かりやすい取り組みの説明や、新渡戸文化学園の校長先生から学校のコンセプトや教育方針についても丁寧にお話をいただきました。私自身が通訳を担当し、ゲストの皆さんからも多くの質問が飛び交うなど、活気あふれる時間となりました。

東京都立国立高等学校での授業見学

午後は東京都立国立高等学校を訪問し、小原先生の情報Iの授業を見学しました。

見学させていただいた授業は、生徒たちがグループで作成したPythonプログラムを発表する時間でした。
クリスマスプレゼント交換の組み合わせを考えるプログラムや、デートプランを作るプログラム、国立駅から高校までバスを使うか歩くかを教えてくれるプログラムと生徒自身の課題意識を反映したユニークな作品が次々と披露されました。

小原先生の情報Ⅰの授業を参観した後、先生との意見交換の時間が設けられました。各国を代表して来日しているゲストからは、授業の内容や教育現場に関する鋭い質問が次々に寄せられ、活発な議論が展開されました。

1. 「なぜ男女問わずこんなに集中しているのか?」
→ 小原先生:「生徒が解決したい課題にアプローチするプログラムを作るようにしているからです。それぞれが自分にとって意味のあるテーマを選んで取り組んでいます。」

2. 「AIを使っているとのことだが、どうしてか?」
→ 小原先生:「東京都が提供するGPTベースのAI環境を使ってプログラミングをしています。プログラミングを学ぶための学習ではなく、課題解決のためのプログラミングとしてAIを活用することで、生徒たちは自分たちが解決したい課題に対してより実現可能なプログラムを作成できるようになります。」

3. 「先生の授業はとても素晴らしかった。先生自身の能力開発(Professional Development)はどのように行ってきたのか?」
→ 小原先生:「元々数学科の教員で、情報科ができたときに2週間で免許を取りました。その後は『より良い授業をしたい』という私自身の課題解決のために、様々なことを積み上げてきました。」

この意見交換では、各国の参加者が鋭い視点で質問を投げかけ、小原先生の回答に多くの気づきを得る時間となりました。約束の1時間があっという間に過ぎてしまうほど濃密な議論が繰り広げられ、ゲストたちは教育現場での実践の深さに感銘を受けていました。

東京を離れ、宮城教育大学附属小・中学校へ

カンファレンス3日目は、海外ゲスト32名を引率して東京駅から新幹線で宮城へと向かいました。スーツケースを抱えたゲストたちを慌ただしい新幹線乗り場で無事に乗車させるのは一苦労で、修学旅行を引率する学校の先生方の偉大さを改めて感じた朝でした。

宮城教育大学附属中学校では技術科のプログラミングの授業を、小学校では文部科学省から指定を受けて取り組んでいる、小学校情報科の授業を見学しました。

まず中学校では、ネットワークを利用した双方向性のコンテンツのプログラミングの授業を参観。先生の指示が少ない中でも、生徒たちが集中力を切らさずに取り組む姿は非常に印象的で、海外ゲストたちからも驚きの声が上がりました。

視察の合間には給食が振る舞われ、地元の味を楽しんだゲストの皆さんには大変喜ばれました。栄養教諭の先生にも心から感謝です。

小学校では、micro:bitを使ったインタラクティブアートの制作や、toioを使ったプログラミング授業を見学。toioでは、データを記録しながら効率的にボールを集める方法を考えるアクティビティが行われ、生徒たちの創造力と工夫が発揮されていました。

この模様は取材も入っており、以下の動画で当日の雰囲気を感じ取ることができます。
視察の様子はこちら

小学校、中学校の授業見学を終えて、最後は協議会が実施され、宮城教育大学附属小中学校での情報教育の取り組みについてのプレゼンテーションが行われました。

その後の意見交換では、各国から参加したゲストたちから鋭い質問が次々と寄せられ、熱のこもった議論が展開されました。

特に印象に残ったのは、「GIGAスクールのようにデバイスが整っていない学校へのアドバイスはあるか?」という質問に対して、附属中の猪股校長先生が「その時の環境でベストを尽くすことで、子どもの実績が見えてきて、次に環境が充実したときに良い授業ができるのではないか」と回答された場面です。

この言葉には、これまで宮城教育大学附属小・中学校で行ってきた教育現場での実践の知恵と経験が詰まっており、ゲストたちも深く共感していました。

その後、一行は「東北で国際会議といえばG7での実績もある」と某有識者教授に勧められた佐勘へ移動しました。ゲストの皆さんには日本文化を堪能していただきつつ、私とみんなのコードメンバーは翌日のカンファレンス準備に追われ、まるで文化祭前夜のような気持ちで夜を過ごしました。

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