みなさん、こんにちは!みんなのコードで中学校の担当をしている千石です。普段は、中学校の技術科向けの教材やカリキュラム開発、先生方への研修を行っています。私自身、東京都内の中学校で技術・家庭科(技術分野)の教員として11年間勤めていました。現場の経験を活かして、教育現場の変化や新しい取り組みをサポートしています。
今回は日野市立三沢中学校の新任技術教諭である堀内先生にお話を伺いました。なぜ技術の教員になったのか、1年目の指導で苦労した点、工夫した点などを中心にお話しいただきました。
話し手:日野市立三沢中学校 技術科 堀内実柚 教諭(肩書きは2025年インタビュー当時)
聞き手:みんなのコード 講師・研究開発 千石一朗
技術科の教員としてのキャリアをスタートしたわけ
千石:堀内先生は、今年教職1年目で中学技術の先生としてスタートしたんですよね。なぜ技術の先生になったんですか?
堀内先生:中学生の頃、当時体育の先生だった恩師に「君は先生になるといいよ」と言われ「その道もあるのか、、」とはじめてそこで教員を意識しました。当時一番好きだったのが技術で、技術の先生もいいかもなと思いました。
そして、ものづくりについて詳しく学びたいと思い、工業科がある高校に進学し、基礎の部分は高校で勉強をしました。大学は、教員免許も取れてデザインも含めて学べるところをと思い、工科系の私学に進みました。
千石:なるほど。もともと技術が好きという話でしたが、小さい頃からですか?
堀内先生:小学生の頃から作ることが好きで、工作や図工が大好きでした。中学生になって技術の先生が作品作りで上手い/下手ではなく、工夫した点などの過程の部分も評価してくれる先生だったのもあり、さらに好きになっていきました。
千石:大学ではどういう勉強をされてきたのですか?
堀内先生:大学ではデザインを中心に学びました。空間デザインとか建築関係のデザインの勉強をした後、プロダクトデザインとして家具やインテリアなどの勉強をしました。
教職課程は1年生の時から履修していました。4年生に進級した際、新しく着任された教職課程の先生が、のちに私の恩師となりました。その先生から授業のすすめ方や評価方法についてアドバイスをもらったことは、今でも私の支えになっています。
アラムコSTEAMチャレンジをやってみて
千石:ここからは、教員になった今年1年間について聞かせてください。実際に中学校の技術科の教員になって正直どうでしたか?
堀内先生:技術科の中でも情報は苦手としていた分野で、正直イメージが全くついていませんでした。どういうことをやればいいのか、教材は何を使って、どう指導をすればいいのか、という状態でした。それと同時に、教科で使える予算が少ないとわかり、とても困りました。
経験の長い先生だったら、既に指導法を理解した自分の得意な教材があったり、何をどれくらい買えばいいのかわかっていると思います。ただ、1年目の私には、それすらもわからなかったので、前任の先生の指導計画に沿ったものを揃えはしたけれど、時代の変化に合わせた教材も取り入れたいなと思っていました。。そんな時、アラムコSTEAMチャレンジの案内を見つけて、応募をしました。
千石:アラムコSTEAMチャレンジに参加してどうでしたか?
堀内先生:本当に指導の仕方にも困っていたので、とてもありがたかったです。教材だけでなく、指導案もご提供いただけて、助かりました。私はアーテックロボ2.0を選びましたが、いくつかある指導案を見ながら、ロボットカーを選び、4時間分の授業を行いました。どれが生徒にとって扱いやすいだろうかと資料を見ながら考えて選ぶことができたので、とてもわかりやすかったです。
ただ、3年生の技術科の授業は2週間に1回なので、生徒達が前回の授業を思い出すまでに時間がかかるのが思った以上に大変でした。そのため、いろいろ工夫して、Googleクラスルームに事前に説明資料を置き、生徒自身が振り返りできるようにしました。
千石:授業中は、生徒達が楽しそうに活動していたのが印象的でした。何か工夫したり心がけたりした点はありますか?
堀内先生:実際のところ、(4時間のうちの)2時間目くらいまでは生徒たちも「できない…」とか、教材に関心が向かなかったりする場面が見られました。でも、ちょっとしたヒントなどを伝え、ロボットカーが上手く走り回るようになっていったら、生徒自らが楽しさに気づいていったと思います。4人1班のグループ活動にしたので、メンバーに興味のある生徒がいると、その生徒が引っ張っていってくれて、周りもついてくるという様子もありましたね。
本当はあと2回くらい授業時間があれば、もっと工夫できたり、生徒の興味関心も変わったのではないかなと感じました。
千石:以前の技術科の授業は「これを作らなければいけない」という考えを一方的に提示するような授業が多かったけれど、堀内先生の授業は、生徒達が調べる、考える、作ってみる…を繰り返すまさに現代の指導要領に沿った授業だったなと感じました。
来年度に向けて取り組んでみたいことや、若手教師へのメッセージ
千石:来年度はここを改善したいという思いはありますか?
堀内先生:今年度は、授業を進めていくうちにいろんなアイデアが出てきました。アーテックロボはいろいろなセンサを組み合わせて活用することができるので、生物育成とプログラミングを組み合わせてアグリテック*のようなものをやってみると面白いのではないかなと思っています。教材を活用して色々なことにチャレンジしてみたいですね。
*農業(Agriculture)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた言葉。ICTやロボットなどのデジタル技術を活用し、農業の効率化や生産性向上を目指す新しい取り組み
千石:2年生で生物育成と計測・制御とプログラミングを絡めた課題解決、3年生でロボットや車の制御という指導計画も面白いかもしれませんね。
堀内先生:そういうのもいいですね。生徒が考えてPDCAを回していくような、考える授業をやってみたいですね。
千石:ちょっと戻ってしまいますが、新任として着任して苦労されたこともあったのではないかと想像します。なにか取り組まれたことや勉強したことはありますか?
堀内先生:とにかく1学期の間は多くの先生にアドバイスを求めていました。そんな中で皆さんも色々な困りごとがありながらも試行錯誤されているのだと感じました。
千石:具体的にはどんなことをされたんですか?
堀内先生:研修イベントや教材支援などの情報を見つけることを意識しました。技術科の教員は学校に一人しかいないので、教科指導に関することで学校の中で助言を求めるのは難しいんですよね。なので、校外に出て交流をした方がいいと思い、東京都の技術科の研修に頻繁に行ってました。教科の専門性の研修にもたくさん行きました。あとは全日本中学校技術・家庭科研究会の役員をなさっている先生と知り合えたので、そういう方に質問したり、教材を見せてもらいに行ったりしました。
千石:今後、今年の経験を活かしてどう成長したいとか、やりたいことなどはありますか?
堀内先生:自分が授業をやっていく上で目指したいのは、技術科のどの分野でも生徒達が持つアイデアなどを形にできる経験や機会を与えるような授業の実現です。その際に「それやってみたら?」と生徒の背中を押せるような指導を心がけたいです。
千石:最後に、同じような新任の先生へのメッセージをお願いします。
堀内先生:他の先生方は「技術科で女性の先生は珍しいね」とおっしゃいますが、生徒達にとっては教えてもらえるなら男性でも女性でもいいと気にしていないようです。そういうところはもっと時間が経っていけば変わっていくのかなと思っています。そういう意味でも何より授業の面白さが大事だと思うので、生徒が面白いと思える授業ができるように工夫していきたいと思います。
千石:確かに生徒達に聞いた時も、先生が男性か女性かということは気にしてなかったですね。そういうことは気にならないので、もっと授業の面白さ、楽しさを追求していって欲しいという彼・彼女らの要望には共感しました。
インタビューを終えて
私自身にも初任時代がありましたが、堀内先生と同じように相談相手も近くにおらず悩むことが多くありました。そして、同じように技術科の研究会や研修イベントに参加して研鑽を積みました。また、インタビューの中でもありましたが、学校の予算の制限があるために十分な数の教材が揃えられないこともありました。今回のアラムコSTEAMチャレンジは、そういった私が教員時代に困っていたことを解決したく、関わっているプロジェクトです。
今回、堀内先生とのインタビューでそういった私の思いが実際に届いていたことを確認することができ、非常に嬉しかったです。また、その堀内先生の指導を受けた生徒たちが生き生きとプログラミングを楽しんでいる姿にも勇気づけられました。
今回ご支援いただいたアラムコ・アジア・ジャパン株式会社は、サウジアラビアの総合エネルギー・化学企業アラムコの日本法人です。
アラムコ・アジア・ジャパン:Where Energy is Opportunity | アラムコ・ジャパン (aramco.com)