こんにちは、みんなのコード パートナー部の花田です。
みんなのコードは、2024年6月より、アラムコ・アジア・ジャパン株式会社様の助成のもと、中学・高校のSTEAM学習における教材不足解消を支援するアラムコSTEAMチャレンジに取り組んでいます。私は、アラムコSTEAMチャレンジの事務局を担当しています。
今年、アラムコSTEAMチャレンジは2年目を迎えます。10月に次のステップとして、先生たちの学びを支えるレベルアップ研修を開催しました。
レベルアップ研修は、「生成AIやIoTをどう授業に取り入れるか」「STEAM教材でどう生徒の“探究心”を引き出すか」をテーマに、北海道から福岡まで全国13校の中学・高校の先生方が東京に集まりました。
技術・理科・国語・美術、情報といった多様な教科から集まった先生たちは、授業づくりのアイデアを交換しながら、新しい学びのかたちを模索しました。
“先生が楽しむ”! 教材体験ワークショップ
前半のプログラムでは、アラムコSTEAMチャレンジで教材を提供してくださっている各社によるワークショップを実施しました。
まずは、株式会社TFabWorksの高松さんによる「カメラ対応AkaDako生成AI(β)※1」を使ったセッションです。画像認識AIを活用したアプリ開発をテーマに、先生たちはアイデアを出し合いました。カメラに写った画像をAIが自動で要約する機能も試しながら、「画像認識AIを使ったアプリ作りのイメージがわいた」「生徒がアイデアを出しやすくなりそう」といった声が上がりました。

続いて、株式会社アーテック秋岡さんによる「アーテックインテリジェンス※2」のセッションです。アーテックインテリジェンスはアーテックロボ2.0を日本語でプログラミングできる開発中の教材です。アーテックロボ2.0はScratchとPythonでプログラミングすることができますが、アーテックインテリジェンスはChatGPTのように自然言語でプログラミングすることができます。「暗くなったらLEDを点灯して」と指示すると、Scratchのプログラムを組み立ててくれます。参加者は実際に教材を動かしながら、プログラミングのハードルが下がったことを体験しつつ、新しいプログラミング授業のヒントを掴んでいました。

最後に、みんなのコード千石による「M5GOとAmbientを使った計測・制御」のセッションを行いました。
温度・光・加速度センサから得られたデータを元にM5GOに表示や音を出したりする一般的な活用方法の他に、AmbientというオンラインIoTサービスを利用することでM5GOで得られた情報をリアルタイムで記録、グラフ化して確認する、という実践を行いました。
今回は、M5GOを計測・制御だけでなくデータサイエンスにも活用して欲しいという思いから、この事例を紹介しました。Ambientはブロックプログラミングだけでデータをクラウド上に保存し、グラフまで作ってくれるので学習の敷居はぐっと下がります。これによって、中学校では生物育成など、高校では探究学習のツールとしてさまざまな場面で活用することを期待しています。参加した先生方は気温などをセンサで取得し、Ambientへ記録することで、グラフを見ながら環境の変化を直感的に理解し、実践的な学びに繋がることを感じていました。
先生たちが「まず自分が楽しんでみる」ことで、STEAM教材の可能性を実感した時間となりました。
※1:カメラ対応AkaDako生成AI(β)は開発中のサービスで現在はパイロット校でのみ利用可能です。
※2:アーテックインテリジェンスは現在開発中のサービスです。
「一人じゃない」先生たちの対話が広げるSTEAMの輪
後半のプログラムは、それぞれの学校ごとに使用している教材に分かれてディスカッションを行いました。これまで実践してきた教材ごとに分かれて、授業の工夫や課題を話しました。
主なトピックは4つです。
①授業実践報告書をもとに昨年度の報告
②今年度の実践報告
③教材(スライドやワークシート等)と評価について
④教材を来年度以降にどう活用していくか
それぞれのテーブルでは、報告だけでなく、自然と「悩み相談」や「アドバイスのやりとり」も生まれていました。ある先生が課題を口にすると、他の先生が「うちも同じ状況です」と共感しあったり、「こうやってみたら?」と実際に授業でやってみてよかったことなどを伝える姿も見られました。
多くの先生が共感されていたのは、STEAM教育は“教科の垣根を越える”ということでした。
理科の先生は「AIカメラを使って植物の成長を自動測定したい」と話し、国語の先生は「詩の表現をセンサで“感じる授業をしてみたい」といったこれからやってみたいと思う授業案について、先生方がワクワクしながら話しているのが印象的でした。
一方で、学校現場での課題も共有されていました。
主に、「時間配分の難しさ」「評価の方法」「生徒のスキル差」など、悩みは多岐に渡っていました。それでも、会場には「一人では無理でも、こういう場でヒントをもらえる」という前向きな空気が広がっていました。
「ベテランの先生でも、動機づけは難しい。だからこそ、こうした“試して語り合える場”が必要だと感じました。」という声がありました。
技術や情報の先生は、普段同じ教科の先生が学校にいないことが多いので、どうやって授業をすればいいのか。そして自分たちの授業の正解がわからない中進めていることが多くあります。
それぞれの先生が自分の授業を言葉にすることで、次の一歩を見つけられる、そんな温かいディスカッションの時間となりました。
“学び続ける先生”をサポートする、つぎの一歩
研修の事後アンケートでは、93%が「授業づくりのヒントを得た」と回答いただきました。
アンケートの自由記述からは、先生たちの多くが「新しい発見や刺激を得られた」と手ごたえを語る一方で、「教材アップデートの情報を追い切れない」「継続的に相談できる場がほしい」といった声がありました。
「自分が知らなかった教材の魅力や、効果的な活用法を知れた」
「生成AIの活用に興味はあるけれど、校内で情報共有する場が少ない」
「AIやセンサ技術の進化が早く、情報面でのサポートがありがたい」
「STEAM教材は情報科だけでなく、他教科にもつながる。そこに可能性を感じた」
この研修実施を通して、「学びのきっかけだけでなく、次につなげる環境がまだ足りていない」という課題も明らかになりました。

今後も、先生たちが生徒とともに学びながら教材を使い続けられるよう、サポート体制を整え、先生自身が“学び続ける楽しさ”を感じられる仕組みづくりに貢献していきたいと思います。
私たちの想い
アラムコSTEAMチャレンジを通じて全国の先生方の授業づくりをサポートしてきたみんなのコードメンバーにも、今回の研修で感じたことと想いを聞きました。
【未来の学び探究部 高校担当 永野直】
アラムコSTEAMチャレンジでは、3種類の教材を各校が選択して活用しています。普段、中学校「技術分野」と高等学校「情報」の先生方が一緒に授業の話をする研修の機会はあまり多くありません。今回のレベルアップ研修では学校種を分けず、利用教材ごとにグループに分かれ、ディスカッションを行っていただきました。それぞれ中学、高校、そして担当教科も違いますが、同じ教材を利用している先生同士、お互いに参考にできるようなヒントが多く挙げられました。
今回のレベルアップ研修では、STEAM教育の楽しさ、そして中学校・高等学校の継続したSTEAM教育について、参加者の先生方みんなで考えられたことが、特に素晴らしかったと感じています。
【未来の学び探究部 中学担当 千石一朗】
今回の研修では、自校で利用していない教材も体験してもらいました。本来、専門性を高めるのであれば、1つに絞って研修を行えば良いのでは?と思われるかもしれませんが、授業のアイデアはいろいろなところで閃きます。いつもは触れていない教材に触れたり、初めて会う先生との交流から閃くこともあります。そこは狙い通りの成果が出たと思います。
普段は学校で1人で悩むことが多い技術科の先生方に、研修の場だけではなく、交流の場になっていたのが、良かったです。
【パートナー部 花田 安紗子】
今回の研修は、先生方にとって意味のある場にしたいという思いで準備を進めてきました。
当日なにより嬉しかったのは、参加された先生方の顔が直接見えたことです。どんな思いで授業に向き合っているのか、日々の悩みや工夫を先生方が前向きな気持ちで意見を交わし合っている姿がとても印象的で、この場を設けて本当に良かったと実感しました。
さらに、普段は触れない教材に挑戦してみたり、他校の先生と情報交換したりする中で、新しい気づきや刺激を得ている様子も心に残りました。研修としての学びだけでなく、交流そのものが先生方にとって大きなプラスになっている姿を見て、こうした交流の場をこれからも継続してつくっていきたい、と強く思いました。
今回のレベルアップ研修を通して、先生たちが新たな学びを得て、それを授業に活かし、子どもたちの学びへとつなげていかれるのではないかと感じています。
アラムコSTEAMチャレンジは、そんな先生たちの挑戦を、これからも支えていきます。
今回ご支援いただいたアラムコ・アジア・ジャパン株式会社は、サウジアラビアの総合エネルギー・化学企業アラムコの日本現地法人です。
▶︎アラムコ・アジア・ジャパン:Where Energy is Opportunity | アラムコ・ジャパン (https://japan.aramco.com/en)
▶︎アラムコ:Where energy is opportunity | Aramco(aramco.com)
