こんにちは、みんなのコード パートナー部の花田です。
みんなのコードは、2024年6月より、アラムコ・アジア・ジャパン株式会社様の助成のもと、中学・高校のSTEAM学習における教材不足解消を支援する「アラムコSTEAMチャレンジ」に取り組んでいます。私は、「アラムコSTEAMチャレンジ」の事務局を担当しています。
この記事では、アラムコSTEAMチャレンジ採択校の皆さまにご協力いただき実施した2024年度アンケートの結果をもとに、生徒・先生双方に見られた変化や、そこから見えてきたSTEAM教育の可能性をご紹介します。
なお、アンケートは本プロジェクトに参加する中学校・高等学校の教員34名、生徒1,467名を対象に実施し、集計にはSMBCグループ プロボノワークプロジェクトの皆様にご協力いただきました。
技術科に使える学校の予算は、理想額の44.8%
まず、教員が学校での指導環境について、どのように感じているかをご紹介します。
みんなのコードが2023年に発表した「2022年度プログラミング教育・高校『情報Ⅰ』実態調査報告書*」によると、中学校・技術分野の指導上の課題として、「指導・授業展開の難しさ(61.1%)」「教員の専門性の不足(56.9%)」「教材・資料の不足(48.0%)」が上位に挙がっています。
そこで「アラムコSTEAMチャレンジ」において、中学技術・高校情報を中心としたSTEAM学習において、以下の課題に着目しました。
・教員が指導・授業展開に難しさや苦手意識を感じている
・学校に予算がなく十分な教材を購入できない、または現在使っている教材が適切ではない
ソフト面・ハード面両方の課題を解決し、豊かなSTEAM学習を実現することを目的としています。

今回の2024年度のアンケートでは、中学校技術科の教科予算について、「現在使用できる予算」と「理想とする予算」の2点をお伺いしました。
その結果、教員が「本来はこれくらい必要だ」と考える理想の額に対して、現在の予算は わずか44.8% にとどまっていることが分かりました。
生徒の94.1%が取り組みに満足し、91.4%が理解の深まりを実感
次に、生徒のアンケートを見ていきます。実際に授業を受けた生徒は、ハードウェア教材を使ったSTEAM学習をどのように受け止めたのでしょうか。
満足度、理解の深まりについて聞いたところ
- ハードウェア教材を使った授業によって、94.1%の生徒が「プログラミングを楽しく学ぶことができた」
- 91.4%の生徒が「今までの授業と比べて、プログラミングの理解は深まった」
と回答しました。この結果から、ほとんどの生徒が取り組みに満足し、実感を伴った学びによって深く理解できたことがわかります。
Q. 今回のロボットやセンサー(STEAM教材)を使った授業で、プログラミングを楽しく学ぶことができましたか

Q. STEAM教材を使わない今までの授業と比べて、プログラミングの理解は深まったと思いますか

生徒の自由回答には、以下のような感想が並びました。
「あまり馴染みのないプログラミングがわかりやすくなり、実際に機械が動くことで感動や達成感を得られるところが良かった。」(中学2年・男子)
「ただただ、パソコン上でプログラミングをするよりも、自分で組み立てたプログラミングでロボットを動かしたりするのが楽しかったし、授業も苦手なプログラミングも楽しくやることができた。」(中学3年・女子)
「文字や説明だけでは理解できなかったけど、実際やってみるとだいぶわかった気がする。」(高校1年・女子)
「実際にロボットを動かすことで、積極的に授業に参加することができた。」(高校1年・男子)
「プログラミングがすごく苦手で、いつも授業で遅れを取っていたのであまり好きな授業ではなかったのですが、今回の教材を使ってじゃんけんゲームをしたときは、すごく楽しく、プログラミングの楽しさを理解することができた。」(高校2年・女子)
これらの生徒の声から見えてくるのは、ハードウェア教材が持つ「苦手意識を好きに変える力」です。
画面の中だけの操作では「難しい」「つまらない」と感じていた生徒たちが、自分のプログラムで物理的にモノが動くという「手触りのある成功体験」を得ることで、学ぶ意欲が向上しました。
適切な教材と体験があれば、生徒は苦手意識を乗り越え、自ら楽しみながら学びを深めていくことができる。今回のアンケートを通してアラムコSTEAMチャレンジは、その可能性を実証する結果がわかりました。
82.4%の教員が、生徒に問題発見・解決能力が身についたと回答
授業を実施した教員も、生徒の姿勢や学びの変化を感じています。
アンケートでは、97.1%の教員が「生徒は前向きに取り組んでいた」と回答し、85.3%が生徒たちの「STEAMに対する理解が深まった」と回答しました。
「普段は発言しない生徒が、友達に操作方法を説明していたのが印象的でした。」
「正解がひとつじゃない課題の中で、試して考える姿勢が生まれていた。」
こうした感想が挙げられたように、生徒の主体的な学びの深まりを、教員自身も実感できていることは、本プロジェクトの大きな成果のひとつだと感じました。
また、授業を通じて生徒にどのような力が育まれたか聞いたところ、最も多く挙げられたのは、問題発見・解決能力(82.4%)、次いで、自主性(79.4%)、創造力・発想力(73.5%)でした。

単に「プログラミングのやり方を覚える授業」ではなく、自分で考え、ハードウェア教材で試行錯誤を繰り返しながら解決策をつくり出す学びが実現できたことが分かります。
今回の授業を通して、ロボットやセンサーが思った通りに動かないことも多くあったようですが、その“うまくいかない瞬間”さえも学びになるということが、先生方の言葉からもうかがえました。
「正解を教える授業とは違い、子どもたちが自分で『なにが問題か』を見つけていく姿が見られました。」
「完成させることより、途中の失敗や試行錯誤を楽しむ空気ができていたのが良かった。」
アラムコSTEAMチャレンジ全体の満足度については、参加したすべての教員が「満足している」と回答しています。
特に、「教材だけ渡されるのではなく、授業のつくり方まで一緒に考えてくれたのがありがたかった」という声は、本プロジェクトの大きな意義を示しています。
アラムコSTEAMチャレンジは、2025年度も進行中!
2024年度のアンケート結果から、アラムコSTEAMチャレンジは、現場が抱える課題にしっかり応える取り組みであったと感じています。
生徒の自由記述からは、「実際に触れて学べるのが面白かった」「ロボットが動いた瞬間の達成感が忘れられない」など、ハードウェアを使った体験型の学びが生徒のモチベーションを大きく引き出せたことが読み取れました。
「うまくいかないことも含めて楽しいと思えた」「最初はやりたくなかったけど、やってみたら意外とできた」といった前向きな声も聞くことができ、ただ“できるようになる”だけではなく、“やってみたい”と思える気持ちを教室に広げていく取り組みになっていることを実感しています。
2025年度も、2年目の取り組みが進んでいます。引き続き、教材の改善や支援体制の充実を続けながら、さらに多くの教員・生徒とともに、学びの輪を広げるべく活動していますので、他のレポートも合わせてご覧ください。
今回ご支援いただいたアラムコ・アジア・ジャパン株式会社は、サウジアラビアの総合エネルギー・化学企業アラムコの日本現地法人です。
▶︎アラムコ・アジア・ジャパン:Where Energy is Opportunity | アラムコ・ジャパン (https://japan.aramco.com/en)
▶︎アラムコ:Where energy is opportunity | Aramco(aramco.com)
