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学校や家では見えなかった「好き」が育つ 高知県須崎市の放課後の居場所“てくテックすさき”

― 3人きょうだいの成長を見守る保護者の声 ―

高知県須崎市にあるてくテックすさき(以下、てくテック)は、2022年に開館した子どもたちが無償でデジタルものづくりができる拠点です。PCやタブレット、3Dプリンターなどの機材を使い、イラストや3D制作、音楽、プログラミングなどに自由に挑戦できます。

今回お話を伺ったのは、長年てくテックを利用している3人きょうだい(小5、小6、中2)の保護者、松田さんです。松田さんご一家にとって、てくテックがどんな場所になっているのか、率直な想いをお聞きしました。

3人きょうだいが週4日通うほど夢中になる「てくテック」とは?

― 3人のお子さんたちは、てくテックをどのくらいの頻度でご利用されていますか?

松田さん
開館した4年前からずっと利用しています。てくテックは水・木・金・土が開館日なのですが、基本的に毎週週4日通っています。学校が終わってから16時半から17時頃に来て、19時のお迎えまで約3時間、それぞれ好きなことに没頭していますね。
習い事もしていますが、てくテックに通えるように曜日を調整するくらい、てくテック優先になっています(笑)。

― それほど大好きな場所になっているのですね。初めて利用したきっかけは何だったのでしょうか?

松田さん
長男が、開館と同時に通っていたお友達から誘われたことがきっかけですね。長男から聞かされた時に「そんなおもしろいところが須崎にできたんだね、行っておいで!」と迷わず快諾しました。

ー お子さんたちが初めててくテックを利用した日の様子は、いかがでしたか?

松田さん
「とにかく楽しくて面白くて、また行きたい!」と口を揃えて言っていました。てくテックには、3Dプリンターやレーザー加工機、VRなど、一般家庭では揃えられない機材が揃っています。パソコン1つでこんなことができるんだ!というワクワク感や、自宅や学校では体験できないことがたくさんあります。コンパクトな空間なのに、楽しいものがぎゅっと詰まっているんですよ。

てくテックすさき | 高知県須崎市でプログラミング・STEAM教育が無料で学べる子どもたちの新たな居場所

創って、考えて、没頭する 三者三様の過ごし方

ー 3人きょうだいの、てくテックでの過ごし方は違いますか?

松田さん
全然違いますね。長男は、時期によって興味の対象が変わっていきました。通い始めの頃はTinkerCADでの3D制作に夢中で、今はデジタルイラスト制作にハマっています。そして、Minecraftカップが始まると、その制作のために通う期間が1年の中でもかなり長くなります。

次男は、最初は兄の影響で通い始めました。数学的な思考が得意な子で、タイムアタック的なものや仕組みを理解する作業に夢中になっていますね。家にいるより、ここに来た方が、いろいろなことができて楽しいみたいです。

長女は、ものづくり一択ですね。家では裁縫や工作などアナログなものづくりを楽しんでいましたが、てくテックでの機材との出会いによって、デジタルの世界へと広がりました。
例えば、描いたイラストをレーザー加工機で木に刻んだり、音楽制作にも触れたり、思い思いのクリエイティブ表現を楽しんでいて、娘にとっても本当に最高の場所だと思います!

ー まさに三者三様ですね!みんな「好き」の対象が違うのに、てくテックの空間を楽しめているのですね。

松田さん
単に最新機材に触れられるだけでなく、メンターさんが使い方を分かりやすく教えてくれることも、てくテックの良いところです。仮に自宅で機材を買ったところで、親は教えられないですよね。てくテックなら、デジタル、音楽、裁縫など、それぞれ精通しているスタッフが常駐しているので詳しく教えてくれます。

もっと言うと、メンターさんと子どもの距離が近いのも良いところです!大学生など年齢も近くてお兄さん・お姉さん的存在なので話しやすいです。子どもたちのささいな感情も感じ取ってくれるので、心理的安全性もありますね。

ー 年齢が近いメンターさんとの交流もあるのですね。

松田さん
部活動として捉えられるくらい、文化部の派生版のような空間です。田舎町では文化部が充実している学校は少ないので、てくテックが一つの課外活動の場として活用されていったらいいですね。

てくテックでは、子どもたちがただ好きなことをして遊んでいるだけではなく、Minecraftカップのように、目標に向けて自発的にチームで取り組む活動もしているので、教育の場としても素晴らしいところだと思っています。

子どもの成長を感じた、驚きの光景

ー お子さんたちがてくテックに通ってから、ご自宅で変化を感じた瞬間はありますか?印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

松田さん
2年前のことですが、今でもはっきり覚えています。
長男がMinecraftカップに挑戦するために、自宅のパソコンからMinecraftにアクセスし、友だちとチャットで会話しながらワールドを作るためにコードを打ち込んでいたんです。
友達と協力して、コードを夢中で打ち込んでいる姿を見たのは初めてだったので「こんなことが我が子にできるんだ!」と本当に衝撃的でした。まさか長男がこんなにプログラミングに強くなるとは思いませんでした。

ー まるでIT企業に勤めるエンジニアですね!4年前からてくテックに通っていたということは、2年間でコードを自在に打ち込めるまでになったということですよね。てくテックに通ったことでプログラミング技術が身についたのでしょうか?

松田さん
そうだと思います。家でSwitchでMinecraftをやっているだけだったら、プログラミングは今でも全然できていなかったと思います。てくテックに通ってから、初めてパソコンでMinecraftにアクセスしてコードを打ち込んでワールドを作ることを知り、今も夢中で取り組んでいます。

ー お子さんたちにとって、てくテックはどんな場所だと感じていますか?

松田さん
学校でも家でもない、安心できる”第三の居場所”ですね。
特に次男は、家では毎日私が怒鳴らない日がないくらい、冗談を言ってはしゃぐタイプなのですが(笑)、外では真面目で保育園からずっと「みんなのお手本」と言われていました。私から見ても、家での自分をもう少し外でも出せたらもっとラクになれるのに…と思っていました。

それが、てくテックに通うようになってから、変わったんです。自宅で見せる姿でも、てくテックでなら全部受け止めてもらえる。友達にはひた隠しにしていたオタク気質な話も、メンターさんが一緒に盛り上がってくれる(笑)。そんなメンターさんたちとの交流の中で、「自分を出していいんだ」と気づいたのだと思います。

さらに驚きなのが、学校でも少しずつ素の自分を出せるようになっていったんです。学校でも受け止めてもらえたことで、今では”新しい自分”を楽しんでいるように見えますね。
子どもたちの内面や潜在的な能力を引き出してくれるメンターさんたちには、感謝しかないです!

「好き」の幅を広げ、将来へつながっていく場所

ー 保護者から見て、てくテックでのお子さんたちの活動が、将来につながっていると思いますか?

松田さん
それは本当にそう思います。3人とも何かしらの糧になっているなと思います。
長女に関しては、家ではアナログなものづくりを楽しんでいたのですが、てくテックに通い始めてからデジタルでのものづくりにも幅を広げていくことができました。

次男に関しては、もともと数学が得意なのですが、てくテックのおかげでより伸びていきました。長男は、実は獣医を目指しているんです。獣医になるには、どの分野も網羅できていないと難しいのですが、てくテックでは、デジタルもアナログも体験できるのでプラスになっていると思います。
例えば、高校生になると「情報」という科目を学ぶのですが、長男はてくテックのおかげでそこまで苦労しないと思います。デジタル、アナログの分野で平均的にスキルを伸ばせていますね。

ー 逆に、もしてくテックがなかったら、3人のお子さんたちはどうなっていたと思いますか?

松田さん
間違いなく、3人とも今とは違っていたと思います。
長男はもともとアクティブで、目的なく街を自転車で走り回るのが好きなんですよね。でも、スポーツにあまり興味がないので部活もせず、独自のフィールドワークに没頭していたと思います(笑)。
次男はゲームが大好きなので、あらゆるゲームに没頭して家に引きこもっていた可能性が高いですね。長女は、今まで通りアナログなものづくりで世界が完結していたと思います。

ー 保護者にとって、てくテックはどんな場所でしょうか?

松田さん
保護者にとっても相談できる場所ですね。以前、長男のゲーミングPCの購入をめぐって、てくテックの館長に相談しながら選んだ経験が、特に印象に残っています。館長はPCの組み立てや分解も趣味でされていて、長男の年齢に適したPCのスペック選定、参考サイトを教えてもらうなど、大変お世話になりました。てくテックのお力がなければ、長男は早くにゲーミングPCを手に入れることはできなかったと思います(笑)。

ー さいごに、てくテックへの想いを聞かせてください!

松田さん
てくテックや運営の「みんなのコード」のことを知れば知るほど、この施設の素晴らしさを感じていますし、メンターさんたちの温かい人柄にも、日々感謝しています。なので、てくテックはこれからもずっと残っていってほしい場所です。

高校3年生までという年齢制限はありますが、これからの子どもたちにももっと利用してもらいたいですね。こんな小さな町でも、世界と繋がれる場所があるんだということを1人でも多くの人たちに知ってもらいたいです。応援団長になれるくらい、私も存続のために一緒にがんばりたいくらいの気持ちです!

保護者の方々の中には、「デジタルはうちの子にはまだ難しいかも…」と思われる人もいるかもしれません。てくテックは「できるかも」を一緒に考えてくれて、「できた!」を子どもたちと一緒に実現してくれる場所です。
ぜひ一度、お子さんと一緒に足を運んでみてほしいです。

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