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金沢の居場所から世界へ―ミミミラボチームが挑んだWRO世界大会の3日間―

会場に足を踏み入れた瞬間、胸の奥がじんわりと熱くなりました。ここが、世界と本気で「好き」と向き合える場所なのだと、ワクワクが止まらない感覚でした。

みなさん、こんにちは。石川県金沢市にある「ミミミラボ」で館長をしている溝渕です。「ミミミラボ」は、2021年7月から三谷産業株式会社とみんなのコードが運営しているクリエイティブハブです。

今回、シンガポールで開催された「World Robot Olympiad™(WRO®)2025 International Final」に、ミミミラボチーム「TYTY」が出場し、私も現地に同行してきました。

今回の記事では、その3日間のレポートをお届けします。

WRO®は世界で約25,000チーム、約70,000人以上が参加する世界最大級の国際ロボット競技会です。国際大会には90以上の国・地域から約3,300名が集まり、日本からは13チームが出場しました。数字だけでも圧倒されますが、実際に会場に立つと、その熱量は想像をはるかに超えていました。

今回出場したミミミラボチーム「TYTY」は、2022年から活動を続けてきたミミミラボのロボ部の中心的存在のチームです。国内の大会などで数々の受賞を重ね、4年目にしてようやく手にした国際大会への切符でした。「TYTY」 の2人がここに立つまでの時間を思うと、胸の奥に込み上げるものがありました。

会場はマリーナベイ・サンズのコンベンションセンターで行われ、2025年11月26日から28日までの3日間にわたり開催されました。競技は4カテゴリー、さらに3つの年齢区分に分かれています。ミミミラボチームはROBO MISSIONのシニア部門に出場し、全95チームで競い合いました。

Day1:世界大会の幕開け、緊張とワクワクの一日

大会1日目は、翌日の本番に向けた調整と練習から始まりました。開始時間が近づくにつれ、各国の選手たちが続々と会場に姿を見せます。広大なコンベンションセンターは、あっという間に子どもたちで埋め尽くされました。国内大会とは比べものにならないほどの広さと人の数。視界いっぱいに広がる人の波を前に、ここが世界の舞台なのだと実感していました。

ロボット競技は、事前に万全のプログラミングを準備していても安心できません。会場の空気、コースシートのわずかな湿り気、木枠の高さ、照明の当たり方。そうした細かな違いが結果を左右します。ロボットは正直です。数ミリの差が順位を動かします。

私は柵越しにその様子を見守っていました。最初はやや硬かった子どもたちの表情が、調整を重ねるうちに少しずつ落ち着いていきます。練習後に手応えを尋ねると「明日はいけそうです」と静かに返ってきました。

練習後、開会式の会場へ向かいます。約3000人が集うセレモニー会場は、広さだけでなく、ステージや巨大スクリーンの迫力にも圧倒されました。開会式が始まると、約90カ国の子どもたちが自国の旗を掲げて入場し、次々とステージへ上がっていきます。その光景は、まるで世界そのものが一つの空間に凝縮されたようでした。歓声と拍手が重なり、会場全体が波のように揺れます。

いよいよ明日は本番。高揚感と緊張が入り混じるその空気が、これから始まる競技の幕を静かに押し上げているようでした。

Day2:いよいよ始まった世界大会での真剣勝負

いよいよ2日目から競技が開始です。競技1日目は、事前に準備してきたプログラミングをもとに、競技開始直前に発表される「サプライズルール」を受けて挑みます。この瞬間は、何度経験しても独特の緊張感があります。自分たちの得意とする位置にミッションは来ているのか。発表されるまで、胸が高鳴っていました。

海外チームと肩を並べ、同じテーブルで最後に自分たちのプログラムを調整する時間がきました。さまざまな言語が飛び交う中、画面を見つめながら微調整を重ねる彼らの姿は、まさに真剣勝負そのものでした。準備の時間を経て、いよいよ本番が始まります。

競技がスタートすると、会場の空気はさらに張り詰めます。各国チームのロボットは完成度が高く、思わず見入ってしまう場面もありました。それでもミミミラボチーム「TYTY」は落ち着いていました。安定した走行を重ね、1日目は95チーム中13位でした。数字以上に、4年間積み上げてきたものが世界の舞台で確かに通用していることを誇らしく感じました。

ふと応援エリアに目を向けると、多くの国の国旗がずらりと並んでいました。選手たちと同じ時間を、応援する人たちもまた全力で過ごしていました。その熱量は想像以上で、歓声が波のように広がっていきます。

競技を終え、ホテルへ戻るのかと思いきや、夕方からは参加者によるフレンドシップナイトが待っていました。翌日の競技を控え、本当に楽しめるのだろうかと少し心配もありましたが、その不安はすぐに消えていきました。ステージでの各国のパフォーマンスに加え、会場内にはシンガポールの子どもたちが準備したさまざまなアトラクションが並んでいます。さらに、「TYTY」の2人は日本から持参した缶バッジや小さなグッズを手に、自然と他の国の子どもたちの輪の中へ入っていきました。言葉が十分に通じなくても、笑顔と身振りで交流は広がっていました。

勝敗を競う場でありながら、それを超えて「好き」が人をつなぐ。その光景を前にして、ここは単なる競技の場ではなく、WROは国を越えて子どもたちが結び合う場所なのだと、あらためて実感しました。

Day3:世界の壁と、そこから見えた学び

最終日は、新たなミッションが与えられるチャレンジラウンドが発表されます。前日までの想定が通用しない新たなミッション。審判員のアナウンスはすべて英語で行われ、翻訳アプリは使えません。その場で理解し、その場で組み立て直す力が問われます。

調整を終えたとき「想定通りに動けば10位以内も狙える」と感じる仕上がりでした。しかし本番ではミリ単位のずれが生じ、ミッション攻略には至りませんでした。結果として順位を落とすことになりました。悔しさは確かにありました。それでも、世界大会では誰もが同じ条件で戦っています。環境変化への適応力、再現性、調整力。その重みを私自身も改めて学ばせてもらいました。

2日間の競技が終わり、閉会式に向かいます。順位発表のたびに国ごとの歓声が響きます。日本チームからはRoboMissionシニア部門の「meiden」が3位入賞。共に合宿を重ねてきた仲間が表彰台に立つ姿に、胸が熱くなりました。ミミミラボチーム「TYTY」は、競技2日目のスコアが影響し、最終的に95チーム中42位でした。この順位をどう受け取るかは人それぞれかもしれません。しかし「TYTY」の2人にとってこの舞台で世界と本気で向き合った経験そのものが大きな財産だったと感じています。

国際大会を終えて見えた「居場所」の力

あっという間に、3日間の国際大会は幕を閉じました。振り返ってみると、私がミミミラボで過ごしてきた3年間の中でも、最も濃い時間でした。「TYTY」の2人にとっても、間違いなく大きな意味を持つ舞台でした。できることなら、もっと多くの子どもたちに体験してほしい。そして大人も一緒に、この空気を味わってほしい。そんな思いが残りました。

大会の中で、忘れられない場面があります。海外チームが審判員とやり取りをしている姿です。英語が母国語ではない子どもたちが、自分たちの考えを懸命に伝え、判定についてもはっきりと主張していました。一方で、言葉にできずに戸惑う姿もありました。どちらの姿からも、真剣さとひたむきさがまっすぐに伝わってきました。

その光景を見ながら、ふと考えました。もしあの場にミミミラボチーム「TYTY」が立っていたら、どうしていただろうか。きっと自分たちの言葉で、最後まで伝えようとしたはずです。そう思えたのは、この4年間、彼らの姿を見てきたからです。そして、その土台にはミミミラボという居場所があったのだと思います。

ミミミラボは、いわゆる習い事のように「先生が教える」という形を取りません。課題の解決も、設計も、衝突も、最終判断も、子どもたちに委ねています。大人は横に立ち、同じ方向を見つめる。導くのでも、押すのでも、引っ張るのでもない。ただ一緒に考え、一緒に進む。その距離感を大切にしてきました。強く握りすぎず、離しすぎない。その「ちょうど良い塩梅」を探り続けることが、私たちの寄り添い方です。

国際大会という舞台に立ったからこそ、子どもたちの芯の強さは、自分で選び、自分で引き受けてきた時間の積み重ねから育つのだということをあらためて確信しました。居場所とは、その積み重ねを安心して続けられる環境なのだと思います。

自分の「好き」をとことん追求できる環境と機会を整えること。その時間が、いざというときに自分の言葉で立てる力につながる。ミミミラボで過ごした子どもたちが、自分の「好き」を胸を張って語れる芯のある存在として、もっと世界にあふれてほしい。そんな願いを強く抱いた、国際大会の3日間でした。

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