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役人、NPOで働く①〜役所でしか働いたことのない社会人8年目がみんなのコードに飛び込んだ理由〜

みんなのコードの阿久津です。新卒から7年半働いてきた文部科学省を離れ、昨年10月からみんなのコードで働いております。

といってもいわゆる若手職員の離職、ではありません。ベンチャー企業等研修という文科省の若手向け研修制度に応募して、半年間みんなのコードでの活動に専従している次第です。

今日は、「なぜベンチャー研修に参加しようと思ったの?」「なぜ研修先としてみんなのコードを選んだの?」ということを書きたいと思います。

そもそもなぜ役人に?

私は中学生時代の経験から、「議論」という営みが好きです。

原体験にあるのは、中学2年生の後半の出来事です。最上級生になるための準備として、「私たちはどういう学校生活を目指すべきか」「より良い最上級生になるには」と自分たちや学校の今・未来についてクラス全員、学年全員で何時間も向き合って議論していた時でした。隣の友だちが、私では一生思いつかなかったかもしれない意見を言い、その意見に触発されてまた別の考えが芽生え、話がどんどん発展する。議論というのは、なんと面白くて、無限の可能性を持つのだろう、と私は夢中になりました。

その後、私はこの思いをふくらませて、おおげさにいえば「言論の自由を守ることに貢献したい」、もう少し正確に言うと「他者に不寛容ではなく、誰もが自由に発言できる社会であり続けられるように、人々の生活の基盤を整えることに貢献したい」と考えました。
そして、激しく変化するこの社会の未来に向け、自分とは異なる人生を送る多様な人々に目を向け、一人でも多くの人にとってより豊かで生きやすい社会となるにはどうすべきか、耳を傾け、議論し、調整し、実現を図る仕事として、行政官を目指しました。

そんな私が現在就いている行政官の重要な仕事の一つは、現場の実態を理解することです。そして、今後の社会やそこに待ち受ける課題をデータ等に基づいて推測し、10年後や30年後、さらにその先、といった未来に向けて社会の設計図を描き、実現の道筋を手配することが大切な仕事です。

「みんなのコード」というすごいNPOがある!?

働き始めて何年かしたあるとき、当時私が担当していた新規施策を巡り、様々な関係者の間で意見が対立していました。

「デジタル人材不足で企業が困っている」という現場のニーズを重視する立場、
「地方の過疎化に歯止めをかける」ということを最も重視する立場、
「どこに生まれ育っても、学びたいことを若者が学べる環境を確保したい」という立場、

それぞれの考えはいずれも重要でした。
私たちは、関係者皆さんに了解いただける形を模索しましたが、意見の折り合いがなかなかつかず、調整が難航していました。

調整期限が迫る中、その新規施策を導入することの意義を定量的に示すことで、少しでも伝わりやすくなるのではと思い、急いで必要なデータを探しました。その時に、とあるNPOが公表したデータ(※)を引用することにしました。猛烈に手を動かして資料を作成しながらも、「なぜこのようなデータを、研究者でも行政機関でもないNPOが整理してくれていたのだろう」とふと疑問に思いました。

※当時引用したデータはこちら(「国内の大学における情報系学部・学科の実態調査」)

行政機関として新たな施策を検討する際に、必要なデータや情報を集めることは、私たち行政官の担うべき仕事の一部です。一方で、社会や政治の動向など、まさに政策の窓が開いた瞬間に施策を抱えて飛び込まなければ、客観的に必要性の高い施策だとしても実現が年単位で遅れたり、その頃にはその施策が既に無意味な状態へと移行していたりするものです。

だからこそ、窓が開いていないうちからデータ等の判断材料を収集し備えておくことが重要となります。それでも実際には、災害に端を発するものなど、予期できなかった方向から窓が開くこともままあり、その際にはその時に入手できる情報で最もマシな判断をしなければなりません。

このような背景があるからこそ、社会課題に関して単に「〇〇をすべき」と主張するのではなく、裏付けとなる調査の実施データの整理も併せて行っている団体、というのが珍しく、現役行政官である私はとても気になりました。

その後、改めてわたしが気になっていた「とあるNPO」=「みんなのコード」の理念や活動を調べていくと、共感し、尊敬し、もっと知りたくなるばかり。一通りHPを見終えた頃には、「なぜ彼らは行政官じゃなくNPOで働いているのか」「文科省のどの部分がダメで、彼らに選んでもらえなかったのだろうか」と考え込んですらいました。

なぜベンチャー研修へ?

ということで、気になるNPOが出てきたタイミングと同じくして、小・中・高・大学といった学校教育や、大学等での研究活動がより充実するために、行政官としてどうすべきか。入省以来、業務を通じて考えていった結果、人材面でも予算面でも、意欲ある企業等の方々にも社会課題解決にもっと携わってもらえるよう、環境を整えなければいけないのではないか、という考えが出てきました。

しかし省庁の職員の多くは、新卒で入省しており、少なくとも文部科学省においては、中途入職は珍しく、企業やNPOでの在職経験がある人はわずかです。企業等の論理や感覚を理解しなくては、企業等を巻き込んだ大きな設計図など描けない、と危機感を強く覚えました。

そこで、私は数年前に始まったベンチャー研修制度へ応募して、外の世界を学ぶことにしました。そして、行き先は、気になっていたNPO「みんなのコード」へ。

次回、「役人がNPOで働いてみて何を思ったの?」に続く…

こうして私は、「企業やNPOの論理・感覚とは?」に加えて、「みんなのコードのメンバーはなぜ行政機関ではなくNPOで働くことを選んだのか?」というキャリア面の疑問も携えて、彼らの仲間に一時的になれることに胸を躍らせ、みんなのコードへと”ジョイン”しました。

(ちなみに、研修応募当時に調整が難航していた例の案件は、その後、予想以上に紛糾しながらも、お蔭様で研修へ来る前になんとか調整がつき形になりました。)

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