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みんなのコードマガジン

活動レポートをお届けするウェブマガジン

企業とのコラボレーションレポート~サイボウズ株式会社~

こんにちは、代表の利根川です。

今回ご縁がありサイボウズ株式会社のクラウドアプリ作成プラットフォーム キントーン を使ってのプログラミング授業実践を支援してきました。

そもそも、小学校プログラミング教育の狙い

小学校でのプログラミング教育ですが、一般の方がパッと聞くと「アプリやゲームを作るのかな?」等のイメージを持つこともあるようですが、新指導要領での小学校でのプログラミング教育については、

  1. プログラミング的思考を育む (ざっくりいうと、課題を設定し、それを手順に分解し、プログラムに置き換え、動かしてみて、うまくいかないと修正していくことを論理的に考えながら行うこと)
  2. コンピュータ・プログラミングの有用性に気づき、課題解決に使おうという態度を育む
  3. 教科の学びを深める (情報やプログラミングといった教科が出来るわけではなく、既存の教科等の中で実施する)

の3つを目的にしています。

サイボウズ株式会社・キントーンとは

サイボウズ株式会社は1997年創業のクラウド型グループウェア提供企業なのですが、「チームワークあふれる社会を創る」とのミッションの下活動をしており、昨今盛り上がっているプログラミング教育についても既に代表の青野社長が「未来の学びコンソーシアム」の発起人に加わっていたり、働き方改革においても積極的な活動をしている会社です。そんなサイボウズ社の提供するキントーンは (主にビジネス向けの)クラウドアプリのプラットフォームであり、高度なプログラミングの知識が無くとも、データベースとその入力画面・集計結果画面などを作ることができます。

今回のコラボレーション

みんなのコードの元教員メンバーとサイボウズ社長室の中村龍太氏が中心となり、

  1. キントーン x プログラミング x 教科 の単元を見つける
  2. その単元の指導案 (授業のプラン) を作る
  3. 実際に授業をしていただく先生を探す

の3ステップで実施しました。

4年生の理科の「季節と生き物」と国語の「新聞づくり」で指導案の作成・授業の実施支援をしました。

理科 季節と生き物

活動内容

この単元では、春・夏・秋・冬 と年間を通して、学校やその周りの生き物を観察し、季節で変化する様子を学びます。従来であれば、紙で観察記録をして、グループの中で記録を比べたり、最後一年間自分の記録を通して見たりします。そこをキントーンの観察アプリに記録を入力することにより、クラス内で記録の共有が瞬時にできたり、季節をまたがって同じ植物の変化を整理したり、逆に同じ季節の様々な生きものの様子を眺めたりと従来の学習方法よりも多面的な学習を効率的に行うことができます。

また、この活動の中では、「どういった観点で観察した記録を整理するのか」はソフトウェアエンジニアの言葉でいうと「SQL文をどう組み立てるか」と近く、Scratchに代表されるブロックプログラミングとは別の種類の「プログラミング的思考」を育む活動であると共に、コンピュータを使うことの有用性への気付きや、課題解決に使おうとの態度を育んでもらおうとの狙いです。

活動の様子

4月25日 立川市立上砂川小学校で授業を実施しました。この日は2回目ということもあり、子どもたちはキントーンにログインしてアプリで自分の記録を見るところまでスムーズに実行していました。今回の授業では気温や天気の入力など、キーボード操作などの操作をできるだけ少なくし、紙の観察カードをスキャンしておいたデータを登録する作業をメインに据えました。

早く終わった児童は友達のデータを見てよさを見つける活動に移っていきましたが、先生から教えてもらわなくても自分たちでスライドショーのようにデータを表示する方法を見つけ、次々に画面を切り替えてデータを見ていたのが印象的でした。この「季節と生き物」の学習は年間を通しての活動になるのですが、学年の最後にはキントーンやコンピュータそのものを使いこなす姿が見られることだろうと確信しました。

国語 新聞づくり

活動内容

この単元では 新聞作成 を実施し、(ITだけでない)情報の収集・整理・発信等を学ぶ単元です。その中で「アンケートを実施し記事化する」という活動が教科書にもあり、「新聞の目的と特性を理解し、書くために必要なことを調べる」という国語の活動をキントーン化することにしました。

こちらも従来の紙であれば、「アンケート企画・作成」→「人数分コピー」→「回答」→「手で集計」→「グラフ化」→「考察」とのステップであったのが「アンケート企画・作成」→「回答」→「考察」と「人間でないとできない本質的な活動」に集中することができ、従来よりも深い学びが出来る学習活動になります。

プログラミング的思考の観点としては、「何を知りたいのか」→「どう質問し、適切な回答方法は何か」→「キントーンアプリの作成」→「アンケート実施前のレビュー」との活動により、ソフトウェアエンジニアの言葉でいうと「データベースのテーブル設計」と近い活動を実施しています。また、コンピュータの便利さという観点についても単に作業が減るだけでなく、人間でないとできない設計・考察に時間を割けることでコンピュータの有用性に気づいてもらうと共にこの他の活動にも生かしてもらいたいなとの狙いです。

活動の様子

事前にアンケート設計の大枠を考えていた子どもたちは、先生に示された「自由回答」「選択回答(択一)」「選択回答(複数)」の違いを抑えて、自分たちの聞きたいことをキントーンのアンケートアプリ化しました。どの回答方式(=データ型)が良いのか先生の説明もよく子どもたちはきちんと理解し、アンケートの作成に取り組むことができました。キーボード入力の機会がこれまで少なかった為、文字の入力には苦労している子が多かったですが、アンケートの作成そのものは楽しかったと言っていました。授業の最後に、先生がアンケートへの回答方法を示し一瞬でグラフ化すると子どもたちからは「おー、すごい!」との歓声が上がっていました。

良かった点と今後の課題

子どもたち

アンケートのテーブル作りも少し難しいかと懸念していたのですが、子どもたちは全く集中を切らさずに取り組んでいました。また、こちらが説明していない機能も適切に使いこなすあたりはさすがだなと思いました。一方で、いかんせん文字のキーボードでの入力が遅いのが子どもたち自身も苛立たしいようで、これをきっかけにその点は改善しだすと良いなと感じました。

大人

こちらが用意した授業用スライドよりも、子どもたちにより一層伝わるような新たな資料を用意したり、時間配分を工夫したりと先生自身が学級の実態に合わせた改善をして実践いただくことで、私たちの狙い以上の授業となったと感じています。

そして、プログラミング教育といればアンプラグド、Scrathやロボットを思い浮かべますが、今回のデータベースを基調にしたキントーンもプログラミング授業の一つの選択肢になることを確信しました。しかし、中身が良いとわかってもそれだけで広まらないのが小学校プログラミング教育の悩ましい点で、これから広める為には「webを開くとすぐ使える」プログルやScratch と「同等」とまでいかないにせよ、忙しい先生が無理なく始められるような形にできると良いかと感じました。

興味持った先生は

下記フォームからお問い合わせいただければ、サイボウズ社担当者より手順をご案内いたします!

サイボウズ株式会社 プログラミング教育担当 中村龍太 ryuta-nakamura@cybozu.co.jp

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