こんにちは、みんなのコードの千石です。みんなのコードでは、全国の中学校「技術」担当の先生方への研修講師や教材・カリキュラム開発を担当しています。
先日、2024年7月2日に町田市立南成瀬中学校でアラムコ・アジア・ジャパン株式会社さんとのプログラム「アラムコSTEAMチャレンジ」のキックオフセレモニーを行いましたので、今日はその様子をお伝えしたいと思います。
アラムコSTEAMチャレンジ:https://steam-challenge.code.or.jp/
教育現場が抱える課題
今回、アラムコさんと一緒にプログラムの内容を検討する中で、改めて日本の教育現場が抱える課題について考えました。中学校では技術・家庭科技術分野(以下、技術科)、高校では情報科の中で、コンピュータやプログラミングについて学習する教科があります。生徒一人一台のインターネット端末が導入された一方で、十分な準備時間が確保できない、プログラム指導に対する不安教材不足、そもそもの時数不足…私の教員時代から課題は山積みで、現在も楽観的ではありません。指導できる先生は積極的に取り組む一方、指導に自信がない先生はなかなか踏み出せない状況です。教材面を見ると、教材がないと先生方の情熱や創意工夫だけではどうにもならず、結果として、生徒が経験するプログラミング教育の差が広がるのではないかと、私は危機感を抱いていました。
このような状況の中で、担当者として、「全国の先生方にSTEAM教育を支援して、とにかく教材を使ったプログラミングの授業、画面の中だけではない外の世界と繋がった計測・制御や課題解決の授業をより多くの生徒たちに体験してもらいたい!」という強い思いで、このプロジェクトを企画しました。
「アラムコSTEAMチャレンジ」とは
このプログラムは、全国5,000人の中高生がハードウェア教材(以下STEAM教材)を使った授業を受けることで、社会課題に興味を持ち、将来において自分の生活や社会をより良くするための課題解決能力を身につけることを目指すものです。プログラミングだけでなく、探究や総合の学習など、テクノロジーを活用した課題解決に取り組みたいという全国の先生方を応援するべく、企画しました。
今回、テクノロジー分野に関わる年代のダイバーシティやジェンダーバランスを考慮し、経験の浅い初任者の先生方や女性の先生方の応援枠を設置しています。また、教材を無償で配布するだけでなく、授業計画の立案を支援する伴走支援も行います。
模擬授業:プログラミングで日常を便利に
キックオフセレモニーの中では、南成瀬中の生徒さんに協力してもらい、実際にSTEAM教材を使った計測・制御の導入部分の模擬授業を行いました。アラムコ・アジア・ジャパン社のジャスタニア社長、サウジアラビア王国大使館のガーズィー・ファイサル・エス・ビンザグル駐日大使、みんなのコード代表理事の利根川も参加し、生徒と一緒に授業を体験してもらいました。
生徒たちは、水分センサを用いて植物工場を作ったり、サーボモータを用いて自動で開く宝箱を作りました。生徒たちは、1学期にScratchを使ったプログラミングをしていましたが、センサやアクチュエータを使ったプログラミングは初めての体験でした。
自分が作ったプログラムが目の前で動き出すことに、生徒たちは、男女問わず目を輝かせ、熱心に授業に取り組んでいました。
模擬授業後、参加した生徒からは「日頃からプログラミングに興味があり、PythonやHTMLを使っていますが、ハードウェアを操作するプログラミングは初めてでした。自分の手で作ったものが動くのを見て、ワクワクしました。」といった声があがりました。
パソコン画面の中だけではなく、このように実際にモノを動かす体験を通して、生徒たちはプログラミングの可能性、そして日常をより良くするための新たな方法を学ぶことができます。この模擬授業を通して、計測・制御の授業が行える教材が必要不可欠であるということが、参加していただいた皆さんにも伝わったと思います。ジャスタニア社長、サウジアラビア王国駐日大使も「非常に楽しい時間を過ごせた」「これを機に未来に必要なスキルを習得して、よりよい社会の実現を目指してほしい」とおっしゃっていたのが印象的でした。
キックオフセレモニー:STEAM教育の必要性を全国5,000人の中高生へ
キックオフセレモニーには、生徒12名に加え、教育関係者、アラムコ・アジア・ジャパン社のジャスタニア社長、サウジアラビア大使館のガージー・ビンザグル駐日大使、メディアの皆さまが出席しました。
アラムコ・アジア・ジャパン社のジャスタニア社長は、「私たちの目標は、未来を創り出す力強い次世代を育成すること。未来を彩る、新たな挑戦を共に楽しみましょう」と力強く語り、プログラムへの熱い想いを語ってくれました。
みんなのコード 代表理事の利根川は、「アラムコが掲げる『エネルギーで未来を作っていく』というビジョンと、みんなのコードの『誰もがテクノロジーを創造的に楽しむ国にする』というビジョンが目指すところは同じだと感じた。ここにいる全員でプログラムを成功させたい」とコメントし、アラムコ社との連携による情報教育の未来への展望を語りました。
このキックオフセレモニーを通じて、関係者が改めてSTEAM教育の重要性やその可能性について理解し、共感を得ることができました。今後、ご応募いただいた中学・高校の先生方と、多くの生徒が未来に向けた力強い一歩を踏み出すことを期待しています。
本プログラムの応募締め切りは7/19(金)です。全国の公立の中学・高校の先生方には奮ってご応募いただけると幸いです。
応募はこちらから:https://steam-challenge.code.or.jp/