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“Social Innovation Mission 2025 inインド” レポート

〜ビジョンを追求する意思決定について〜


こんにちは、みんなのコードCOOの杉之原です。私は、これまでITベンチャー企業で組織の成長フェーズを経験してきました。みんなのコードでは、業務執行責任を担いながら、ダイバーシティ経営の観点からの組織づくりにも注力しています。

先日、インドで開催されたプログラム「Social Innovation Mission 2025 in India」(以下、SIM2025)に参加してきました!SIM2025は、クロスフィールズさん主催、社会課題解決に取り組む企業や団体を訪問するプログラムです。

今回スタートアップ/NPO参加枠に応募し、選考プロセスを経て参加が叶いました。
https://21817745.hs-sites.com/sim2025

プログラムに参加するにあたって、私は、「“誰もが”とは何か」という問いを持つことにしました。
みんなコードは「誰もがテクノロジーを創造的に楽しむ国にする」というビジョンを掲げていますが、私自身、さまざまな事象にあまねく共感や課題意識を持てていない自分にもやもやしていたからです。

インドのNGO2団体、ソーシャルスタートアップ5社を訪問させていただきましたが、ビジョンの追求という観点で印象に残ったことを書きたいと思います。

ビジョンの追求(ソーシャルスタートアップ×非営利組織)

プログラムでは、3Dプリントによる義足ソリューション事業を展開している日本のスタートアップ「Instalimb(以下、インスタリム)」、インスタリムが技術連携している「Narayan Seva Sansthan(以下、NSS)」を訪問しました。2社のお話を伺い、ソーシャルスタートアップと非営利組織が連携することで、双方がインパクトを拡大している事例を知ることができました。

インスタリムは、個人向けの義足クリニック事業に加え、NGO等とも連携し、義足関連技術のライセンス提供を行っています。

▲義足をつくる3Dプリンタを見学

次にNSSは、1985年に設立されたインドでもトップクラスの規模のNGOのひとつです。ポリオやその他の障害を持つ人々の治療とリハビリテーションの無償提供、経済的に恵まれない子供たちへの教育の無償提供、障害を持つ人々の自立を促進するための職業訓練などを提供しています。

「求めるすべての人を受け入れる」という精神で運営されているのが印象的でした。

▲NSSの皆さんと。オープンマインドで受け入れてくださいました

現在、インスタリムはNSSに3D義足の設備及び技術を提供し、NSSはその技術を購入及び実装することで義足の提供数を大幅に増やすことができているそうです。

インスタリムは、NSSと出会うまでは、技術のライセンス提供を行っていなかったそうですが、「世界中で義足を必要とする5,000万人に届けるためには、クリニック事業だけではとうてい実現できない」というビジョンに立ち返った会話をして、NGOへのテクノロジー提供を決断したそうです。

NSSも、インスタリムとの連携によりインパクトを拡大することができ、これによってNSSのファンドレイジングにも良い影響を与えているそうです。

ビジョンの追求(インパクトvs.財務的価値)

意思決定の観点ではっとさせられたのはOorjaとのセッションでした。

Oorjaは小規模農家に特化したFarming-as-a-serviceを提供しているスタートアップです。収入が厳しいエリアの農家に、灌漑のエネルギー源をディーゼルからソーラーパネルへ置き換え、農作方法のコンサルを行うことで、ともに収入アップを目指しています。

参加者から「スタートアップとソーシャルエンタープライズ(社会的企業)の違いは何か」という質問がされた際に、CEOのAmitは「パーパス・ドリブン、かつ、利益も追求する」と回答していました。

▲Oorja経営陣とのディスカッション

さらに、以下のように話してくれました。

インパクトと利益のバランスをどう取るかという観点では、Oorjaは真ん中よりはインパクトに近い立ち位置だろう。事業拡大の文脈では、もちろん儲かるところからやるという意思決定もあるが、Oojaは、より儲かるところに、というマインドセットがない。より貧困が激しいところに広げていく。事業計画を見て、人は「狂っている」「儲からないぞ」と言う。しかし、この拡大マップを作ること自体が、パーパス・ドリブンだと言える。

頭では分かりますが、資金提供者の意向がある中で事業を成長させていく力学の中で、パーパス・ドリブンの意思決定を実際に継続するのは難しいものです。私自身、NPOにきてから日々痛感しています。そのため、意思決定が逆転しないためにどのような仕組みを作っているか、質問しました。

<意思決定が逆転しないためのポイント>

  • パーパス・ドリブン
    • パーパス・ドリブンで拡大マップ(戦略)を作成
  • 機関設計
    • 投資家の構成・対話
    • 取締役の構成
  • ビジネスモデル
    • 事業拡大とインパクトが連動
  • 採用にこだわる

この話を聞きながら、みんなのコードについても、機関設計、事業戦略やビジネスモデルといったハード面、そして採用をはじめとする組織のソフト面の両面を、インパクトと財務的価値のバランスの観点から振り返りたいと思いました。

ビジョンの追求(社会課題を取り込む仕組み)

インド(特にグルガーオン)に足を踏み入れ、まず圧倒されたのは都市の大気汚染と街中のゴミの多さです。そして、オフィス街を少し離れると、とにかく男性が多く、訪問先のPRポスターに登場するのもほとんどが男性でした。

こうしたインドでの日常の後ろには、幅広い社会課題、なかなか変わらぬ価値観、急速な経済成長、そして都市の過密といった、相反する要素が同時に存在する“混沌”がありました。

さらに、訪問したNGOでもスタートアップでも、「アメリカや中国に対抗し、グローバルサウスで私たちはリーダーシップを発揮する」と耳にしたことが、印象に残りました。

さて、私は、「”誰もが”とは何か?」という問いを持ってプログラムに参加したわけですが、訪問させていただいたNGO団体や企業の話、参加者とのディスカッションを経て、「社会課題を自分や組織に取り込む仕組みをどう作るか」という問いに変えて考えを進めました。

インドに到着して最初の数日間、自分が社会課題を「感じよう」としすぎている感じがありました。しかし、貧困からエネルギーまで幅広い課題に触れる中で、自分が自然と関心を向ける領域と、そうでない領域がありました。
1人ですべての課題に共感しなくていいし(できないし)、1社でビジョンの実現もしなくていい(できない)ことを前提に置くことができました。

一方で、意図的に多様な観点に触れなければ、自分がすでに持っているストーリーの範囲内でしか、課題を理解できなくなるとも感じました。

みんなのコードには「気づきに行こう」「仕組みにしよう」というバリューがあります。だからこそ、個人や組織が社会課題を取り込む仕組みを作ることが重要であると考えています。


今回、20名弱の大企業の皆さんと4名の起業家の方々とご一緒しました。非営利セクターの参加者は私だけでしたが、日を追うごとに、皆さんが非営利の仕組みに興味を持ってくださる姿が印象的でした。帰国後も、みんなのコードをはじめ、非営利セクターとの関わりを持ってもらえたら嬉しいです。

より多くの人がソーシャルセクターと接点を持てる環境をつくるために、私もできることを実践していきたいと思います。

▲時間をともにした素敵な皆さんと!

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