こんにちは、みんなのコード パートナー部の花田です。
みんなのコードは、2024年6月より、アラムコ・アジア・ジャパン株式会社様の助成のもと、中学・高校のSTEAM学習における教材不足解消を支援する「アラムコSTEAMチャレンジ」に取り組んでいます。私は、「アラムコSTEAMチャレンジ」の事務局を担当しています。
今回は、筑波大学附属聴覚特別支援学校の教員である、福島先生にお話を伺いました。先日授業も見学させていただき、その際のレポート記事もありますのでこちらも合わせてご覧ください。
課題解決は自分自身と向き合う学び〜筑波大学附属聴覚特別支援学校のアラムコSTEAMチャレンジ授業レポート〜
話し手:筑波大学附属聴覚特別支援学校 教員 福島恵美子先生
(ご所属は2024年度3月インタビュー当時)
聞き手:みんなのコード パートナー部 花田 安紗子
歯科技工士から教員へ。キャリアチェンジのきっかけ
花田:まず、福島先生のこれまでのキャリアについてお聞かせいただけますか。
福島先生:私は教員になる前、歯科技工士として歯科材料メーカーの歯科材料製品の開発に携わっていました。開発業務の中では、聴覚障害のある歯科技工士の同僚と一緒に仕事をする機会もありました。その経験を通して、得た知識や技術をもっとわかりやすく伝えたいという思いが芽生え、次第に教育への関心が高まっていきました。
ご縁があり、筑波大学附属聴覚特別支援学校の歯科技工科の教員として勤務することになりました。そして、働きながら技術・家庭科(技術分野)の教員免許を取得しました。
現在は専攻科(高卒以上)の担任をしながら、中学部の技術分野の授業も担っています。
指導対象となる年齢層は幅広いですが、授業では音声と手話を用いながら、一人一人の生徒の理解が深まるよう視覚教材を活用した授業づくりを心がけています。
花田:そうだったのですね。技術分野の免許取得時の大学の講義の中で印象に残っていることはありますか?
福島先生:教員免許の取得課程で受講した「技術科指導法」の講義で、初めてmicro:bitに触れ、プログラミングやレーザープリンタを用いた実習を体験しました。
歯科技工士は、患者さんの詰め物などをCAD/CAMや3Dスキャナ、3Dプリンタを扱うので、少しは慣れていましたが、デジタル機器を用いた電気工作や自由な発想でのものづくりは私にとって初めてで、とても新鮮でした。
講義の初回のオリエンテーションで「技術の魅力を子どもたちに伝えるためには、まず教員がその世界の奥深さや面白さを知ることが求められる。なぜなら、教員が知らずにそれを子どもたちに伝えることはできないから」という先生からの教えが印象に残っています。実際、授業を始めてみるとその通りだなと思います。
私が講義の中でに感じた感動を生徒に伝えたいという気持ちが今の授業づくりの原点となっています。
手先が器用で前向きに取り組む生徒もいれば、ものづくりに対して苦手意識を持っている生徒もいるので、デジタルのものづくりって、そういうハードルを下げてくれるんじゃないかと思っているんです。自分が設計したものがその通りに出来上がるわくわく感や夢中になって取り組めることが伝わればと思っています。
技術教員として1年目に「アラムコSTEAMチャレンジ」に申し込んだ理由
花田:中学部の技術分野の授業を担当して、いかがでしたか?
福島先生:正直、わかりやすい授業をするのは難しいなと感じました。生徒一人一人に応じることを考えながら伝えることを意識しましたが、難しさを感じました。しかし実際は、生徒が目の前で、ものづくりをして喜んで楽しんでいる姿を見ると、やって良かったなと、とても達成感がありました。
苦労したのは、授業時間以外の準備時間が結構かかるという点ですね。畑の準備などもあって、植物は思うように生育してくれないし、夏休みも毎日水やりや雑草抜きをする大変さもありました。あとは筋力とか握力が欲しいなと感じましたね(笑)。瓶などの蓋が固く、開けられないから他の教員に頼むなんてこともあったので、体力とかそういった面も必要なんだなと痛感しました。
花田:そんな中で、「アラムコSTEAMチャレンジ」を申し込もうと思ったのはなぜですか?
福島先生:やはりさっきもお話しした技術分野の免許を取得する講義を受けていた際に、micro:bitを体験したことが大きかったと思います。その楽しかった経験があったからこそ、私も授業で取り入れたいと思ったのが大きな理由でした。ただ、高額な教材を購入するというのは難しい面もありまして、そんな中でこの企画があったのですぐに応募しました。
今後プログラミングや、デジタル教材に触れて授業をすることは、より重要になっていきますし、生徒にも自分で問題を見つけて解決するという試行錯誤する力を育てたいと思っています。そういった経験を生徒たちにさせてあげられるのはとても素敵なことだと思います。
花田:ありがとうございます。先ほど準備の時間がかかって大変というお話もありましたが、タコラッチを活用した授業作りについてはいかがでしたか?
福島先生:一番悩んだのは、初めて使うSTEAM教材を、どう分かりやすく短い授業時間で伝えられるかという点です。そこは大学で学んだ講義の内容なども参考にしながら、最初はタコラッチの接続方法などをわかりやすく伝えるミニクエストを作って導入として取り組みました。その際にうまく立ち上がらない、カメラが起動しないなどのトラブルがありました。リロードの仕方や電源の抜き差しなどもクエストに組み込めば良かったなと反省した点でもあります。
もうひとつ、最初にとても悩んだ点としては、音声ブロックを使うかどうかという点でした。聴覚に障害のある生徒たちにとって、最初から音声ブロックは使わないで、光や振動やモーター制御などを使うほうがいいのかなど、いろいろ悩みました。その悩みを伴走いただいているみんなのコードの千石先生にそのまま、相談させていただいて、最終的には音声ブロックを使う形での授業を行いました。結果として、生徒はこちらの心配をよそに、音声ブロックも含め様々な工夫を凝らしながら取り組んでいました。
花田:通常の授業準備もある中、秋ごろに教材が送られてきて、どうすればいいのかという気持ちも正直あったのではないですか?
福島先生:そうですね、なので千石先生に正直に授業の内容について二の足を踏んでいる状況をお伝えして、背中を押していただき、それで道が開けた気がします。伴走いただいてとても助かっています。
今回ご提供いただいた教材に付属する課題解決カードが秀逸で、カードという形式もわかりやすかったですし、裏面のコードの組み方のヒントが生徒にとってわかりやすかったと思います。2回目の授業はみんなのコードの方々もサポートに来てくださり、生徒がプログラムがうまく動かない場合や、アドバイスの仕方などの対応を見て私もとても勉強させていただきました。
花田:私が見学させていただいた際、生徒の皆さんの反応がとても良いと感じたのですが、先生から見ていかがでしたか?
福島先生:タコラッチが、課題選びから、コード生成までが比較的フラットで扱いやすかったからだと思います。やることが明確化されており、また主体的に取り組める内容になっていたので、生徒たちも不安を持たずに取り組めたように感じました。もし不安だったらもっと質問が出たと思いますが、そういう感じでもなく、スムーズに取り組んで深めていっているように感じましたね。班の中で活発に取り組む子も出てきて、生徒の笑顔も見れたので良かったと思いました。
先日卒業式があり、中学部の生徒から色紙を頂いたのですが、そこには、私へのメッセージと共に可愛らしいタコの絵を書いてくれた生徒もいて、タコラッチが印象に残ったんだなと思いました。
これから来年度に向けて取り組んでみたいこと
花田:最後に、今後取り組んでいきたいことなど意気込みをお聞かせいただけますか?
福島先生:今、校内で理科の先生などにタコラッチを試していただいたりしています。もう少し教科横断的な使い方ができればと考えています。例えば作物を育てる際の温度変化をプロットしていくなど、そういう使い方ができないか検討をしているところです。まずは先生方に試していただいて、他教科でも使えたらいいなと思います。
今回は、タコラッチの課題解決カードについて考えてもらいましたが、自らが聞こえにくさで生活の中の困ったことについても考えてもらい、課題解決できたらいいなと思っています。身近なところの改善から、自分でももっとタコラッチの活用に取り組んでいきたいと思います。
2025年度へ向けての改善としては、生徒たちへ伝えるスキルをもっと身につけること、それから、もう少し授業時間を増やして生徒たちが少しずつ進めていけるといいなと思います。生物育成の部分でも、栽培システムや温度管理、水分管理なども絡めてできたら面白いと思いますね。最近は習い事でプログラミングに通っている生徒もいますが、苦手な生徒でもわかりやすく取り組めるような教材の準備や、生徒が課題を自分ごととして補え、自ら深めていけるような授業にしていきたいと思っています。
福島先生、お忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございました。
みんなのコードでは今後も先生方や生徒の皆さんに使っていただくことで、新しい発見があるような授業の支援をしていきたいと思います。
今回ご支援いただいたアラムコ・アジア・ジャパン株式会社は、サウジアラビアの総合エネルギー・化学企業アラムコの日本現地法人です。
▶︎アラムコ・アジア・ジャパン:Where Energy is Opportunity | アラムコ・ジャパン (https://japan.aramco.com/en)
▶︎アラムコ:Where energy is opportunity | Aramco(aramco.com)