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なぜ学校でのボランティアが社員の「自社への誇り」に繋がるのか―教員・社員527名への調査と3つの連携事例から見えた、5つのヒント

こんにちは、みんなのコード パートナー部の阪上です。私が所属するパートナー部は、企業や個人のサポーターの皆さまとのコミュニケーションをメインに日々活動しています。

「本業の強みを活かした社会貢献の形を模索しているけど、具体的にどう進めればいいのかわからない」「社員が日常のビジネスシーンでは出会えない価値観に触れ、仕事の意義を捉え直すきっかけをつくりたい」——そんな声を、企業担当者の方からよくいただきます。

そこで、2026年3月6日(金)に、大手町のセールスフォース・ジャパンオフィス OhanaFloor にて、「『無理なく取り組める』学校と企業の連携モデルを考えるフォーラム」を開催しました。

フォーラムでは、実際に学校との連携を経験してきた企業担当者と先生方に登壇いただき、「うまくいったこと」「難しかったこと」をリアルな言葉で語り合っていただきました。本記事では、企業と学校がお互いの求めるものを理解し、意見交換をした当日の様子を詳しくレポートします!

※登壇者の肩書きは2026年3月6日時点のものです。

493名の教員アンケートから見えた「普遍的テーマ」×「教員の学び」へのニーズ

はじめに、私から、みんなのコードが2025年度実施した高校教員493名を対象とする企業連携ニーズ調査の結果を紹介しました。

最もニーズが高かったのは「探究学習(総合的な探究の時間)」における企業連携でした。そして、「専門的知識・技術の講義」「チームワークや役割分担についての擬似体験ワーク」が続きます。キャリア関連のニーズは、各票としては少なかったものの、あわせると360票を超えました。企業側からすれば「どの学校でもすでに実施している、馴染みのあるテーマ」という印象があるかもしれません。しかし実態としては、まだまだ多くの先生が求めていることがわかりました。

また、この調査で印象的だったのは、「企業からの支援の対象は、生徒・教員のどちらがよいか」という問いに、約80%の教員が「どちらも」と答えたことです。教員自身も社会の変化を肌で感じ、それを生徒に届けたいと願っていることがわかります。企業との連携目的を「生徒のため」とするだけでなく、「教員自身の学びの場」としても設計することが、持続可能な連携をつくるヒントになりそうです。

事例① 社員300名を巻き込む自社らしい型づくりと、直面した活動継続の壁(株式会社メンバーズ)

まずは、企業側の声として、メンバーズの植松さんにプレゼンいただきました。メンバーズさんとみんなのコードは、2020年〜2023年の3年間、学校での出前授業を実施しました。

▲株式会社メンバーズ 植松理恵さん

「デジタルクリエイターのプロ集団として、自社のスキルやナレッジを学校にシェアしたい」という思いで一緒に始めた出前授業は、3年間で全国21校に広がりました。参加した社員はユニーク数で約300名、参加した生徒は約3,800名

このインパクトを実現できた理由として植松さんが挙げたのが、「型をつくること」の重要性です。Scratchプログラミングとキャリアトークを掛け合わせた自社らしいプログラムの型を確立したことで、社員も参加イメージを持ちやすくなり、「募集をすれば定員がすぐ埋まる」状態になったと言います。参加した社員からは「自分のキャリアを改めて言語化できた」「人前で伝える力がついた」という声があったそうです。

一方で、この取り組みは現在休止中です。その最大の要因として植松さんが挙げたのが、「定性的な手応えを、定量的なエビデンスに変換できなかったこと」でした。

やってよかったという満足度だけでは、活動を続ける根拠にはなりませんでした。何を成果指標とし、どうデータを追うかを設計しておくべきだったと痛感しています

事業活動と社会的活動のバランスの難しさを率直にお話しくださいました。

事例② オンライン活用による、広島と東京のリアルな繋がり(バンク・オブ・アメリカ×広島商業高校)

2つめの事例は、バンク・オブ・アメリカさんと広島商業高校さんの取り組みです。広島商業高校の1年生320名へ向けて、延べ41名の社員の皆さまにオンライン・キャリアトークを実施しました。

▲左から、広島県立広島商業高校 小谷美代子先生・山縣達也先生、BofA証券株式会社 宮島佳与子さん、バンク・オブ・アメリカ・エヌ・エイ東京支店 松本千世さん

広島商業高校が抱えていた課題は、「生徒のキャリア観が地元に留まりがち」であることでした。「知らないから選べない」という状況をなくしたいという思いから、まず夏休みに広島商業高校の先生5名がバンク・オブ・アメリカの日本橋オフィスを訪問。証券業務のスピード感や、世界経済と直結して働くスケールの大きさを肌で感じた先生方は、「企業の理念や現場の空気感を教員自らが肌で感じることで、その『温度感』を持ったまま生徒に伝えることができ、結果として生徒のキャリアの選択肢を広げられる」と感じたそうです。これはまさに、前述の調査結果にある「教員自身も学びたい」というニーズの体現例と言えます。

その後、1年生の授業でオンラインのキャリアトークを実施しました。このとき大切にしたのが、生徒一人ひとりが自分のPCから直接つながるインタラクティブな形式です。画面越しの社員と一対一で向き合っているような感覚が、生徒の主体性を引き出しました。生徒からは、「自信がなくてもやることが大事と聞いて、もっと行動してみようと思った」「学生→就職→定年退職だけが道じゃないと知って、自分の人生をもっと自由に考えていいと思えた」という声があがったそうです。

バンク・オブ・アメリカさんから、今後の展望として、金融リテラシー向上のためのシミュレーションゲームや、AIを活用した言語の壁を越えるイベントなどのアイデアを共有いただきました。これに対し、広島商業高校の先生からは「対面かオンラインかという形式以上に、リアルな体験ができることが重要。企業独自のシミュレーションゲームのような体験は生徒と教員にとって非常に価値がある」と次の連携への期待が寄せられました。

事例③ 社員の働きがいを引き出す”ミッション共感”で広げるボランティアの仕組み(株式会社オープンワーク×新渡戸文化高校)

新渡戸文化高校の教育方針「自分と社会の幸せを創り出す『Happiness Creator(しあわせ創造者)』」と、オープンワークのミッション「一人ひとりが輝く、ジョブマーケットをつくる」が重なり実現した、3年間のキャリアトーク事例を紹介いただきました。

▲左から新渡戸文化高校 勝田浩次先生、株式会社オープンワーク 吉田賢人さん

勝田先生は、オープンワークのある社員が自身の転職経験を話した際、生徒が「転職してもいいんだ!」とつぶやいた瞬間のことが忘れられないと言います。「教員が同じことを言っても届かない。でも、実際にそれを体験した人が語ると、生徒の表情が変わるんです。そもそも、転職という選択肢に触れない教員も多いため、生徒にとっては初めて出会う価値観でもあります。」とおっしゃっていたのが印象的でした。

また、勝田先生は「学校が企業や社員にとっても学びの場になってほしい」という思いをずっと持たれていました。そんな学校と企業の関係性を、先生は次のように表現してくださいました。

企業も学校も、立場・関わり方は違うが、同じように子どもの成長を大事にしていて、同じように育てようという理解があることがとても大事。外の世界に触れた方が再び学校教育に戻ってきて、一緒に子どもたちを育てようとしてくれる姿勢が嬉しかった。

一方、吉田さんが大切にしてきたのは、社員に強制をしないことです。「強制すると受け取る側もしらけてしまう。お互いが気持ちよく関われるにはどうすればいいかを、常に意識した。」といいます。全社ミーティングでこの活動を毎回報告し、ミッションへの共感を社内に広げることが継続の鍵になったそうです。

また、吉田さんは将来的に自社サービスを利用する層と早期に接点を持つという「CSV(事業としての価値)」を意識しつつ、同時に生徒たちの将来も考えていました。「キャリアアンカー*の観点から、多様な選択肢を早い段階で知ることが、その後の人生のサンプルになる」と語る吉田さんの言葉からは、学校という場所を大切に想う気持ちが伝わってきました。

担当者としての軸を持ちながら、常に「相手にとっての価値」を考え続けたお二人。「どうすればWin-Winになるか」を自然に問い続けられる関係性が、3年間の連携を実現させたのだと感じました。

 *個人が自らのキャリアを形成する際に最も大切で、他に譲ることのできない価値観や欲求のこと、また、周囲が変化しても、自己の内面で不動なもののことをいう。

会社がボランティアを正式に認めることで生まれる、社員の意識変化と自社への誇り(明治大学 荒木淳子先生)

産業組織心理学・人的資源管理・キャリア研究を専門とする明治大学の荒木先生には、ボランティア活動に参加した社員34名へのインタビュー調査の結果を共有いただきました。インタビュー調査には、新渡戸文化高校でのキャリアトークに参加したオープンワークの社員11名にも参加いただきました。

調査によると、ワークエンゲージメントなど定量的な調査からは、参加前後での有意な差は見られなかったと言います。「年1回数時間の参加では大きな変化は起きにくいし、参加者がもともと高いモチベーションを持っていることも多い」と荒木先生は解説します。

そこで、インタビュー形式という定性的な調査を行ったところ、社会とのつながりの広がり、仕事の意味を言語化できるようになった感覚、自社への誇りなど、参加者の言葉に豊かな変化が確認できました。さらに、インタビューの発話内容を分析した結果、会社がボランティアを「業務の一環」として正式に認めているかどうかが、社員の意識に大きく影響するということがわかりました。活動が会社の事業方針と一致していること、会社が正式に認めることが、社員がボランティアに参加しやすい土壌をつくることが明らかになったことを共有いただきました。

参加者の気づき、ヒント、そしてこれからの宣言

フォーラムの最後に、参加者・登壇者・みんなのコードメンバーが交ざり、グループディスカッションを行いました。

今後の具体的な連携アイデアはもちろんですが、何より「学校と企業の関係性」を改めて捉え直したという声が多く聞こえてきたことが、とても嬉しかったのでいくつか紹介します。

  • [企業の声] 自社のことばかり考えていた。学校ごとに事情や制約があり、より良い企画を実現するにはもっと学校に寄り添って考えなければいけない
  • [学校の声]「学校側は企業に提供できるものがない」と思いがちだが、Win-Winな関係をどう言語化するかを一緒に考えることの方が大事
  • [学校の声]CSV・CSRの観点から、学校との連携が、企業にとってメリットがあるということがわかってようやく腑に落ちた。今までは、企業に対して申し訳ない気持ちがあった。
  • [学校の声] 学校とやりたいと言ってくれる企業がこんなにあって、企業とやりたい学校がこんなにあるんだから、あとはやり方と土壌を作り出せれば良い形で回りはじめるな、と感じた

自社の強みと学校のニーズが重なるところから始める

今回のフォーラムを通じて見えてきた、学校と企業が「無理なく取り組める」ための具体的なヒントをまとめてみました。

私が特に印象的だったのは、学校の視点に立って考える企業の姿と、企業のために一歩踏み出す学校の姿でした。お互いが相手の立場を想い、理解し合えたとき、連携は単なる「支援」ではなく、共に未来をつくるパートナーシップに変わります。

そうした関係性は一朝一夕に築けるものではありませんが、双方が納得いくまで企画を練り上げるプロセスに伴走することが、みんなのコードの介在価値であることも再確認することができました。


みんなのコードが2025年度に実施した調査では、「連携できる企業が見つかればすぐにでも動きたい」と答えた教員が123名いらっしゃいました。「自社に何ができるかわからない」という段階でも構いません。まずは話を聞いてみたいという企業の皆さま、そして、企業との接点を模索されている学校の皆さま、ぜひお気軽にご連絡ください。

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