特定非営利活動法人みんなのコード(神奈川県横浜市、代表理事:利根川 裕太、以下みんなのコード)は、「小・中・高等学校における情報教育の体系的な学習を目指したカリキュラムモデル案」(以下、カリキュラムモデル案)を発表します。
本取組は、子ども・若者の未来を支援する公益財団法人日本財団(東京都港区、会長:笹川 陽平)に、「公教育における情報教育の発展と共創による地域格差の是正」プロジェクトとして助成いただいています。
背景
昨今、情報技術は私たちの想像を上回るスピードで進化しており、とりわけ生成AIツールへの注目が高まっています。学校教育においても、2023年7月4日に文部科学省から「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」が発表されるなど、情報活用能力の重要性の高まりを受け、変化が起き始めています。
このような中、2024年6月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024」において、急速な社会変化への対応を見据え、イノベーション人材の育成を実現するために「初等中等教育段階における探究的・文理横断的・実践的な学びの推進や理数系教育の推進、情報教育の強化・充実」が提起されました。また、一般社団法人新経済連盟や一般社団法人日本産業技術教育学会による提言・声明の中でも、情報教育の時間数増や小・中・高等学校におけるテクノロジーに関する教育の充実が言及されています*。
*一般社団法人 新経済連盟「次世代教育の実現に向けた政策提言」(2024年4月18日)
一般社団法人 日本産業技術教育学会 「[要望声明]初等中等教育におけるSTEAM教育の導入とテクノロジー教育の拡充・刷新について」(2024年7月15日)
12年間の体系的なカリキュラムモデル案
本カリキュラムモデル案は、情報教育の強化・拡充の機運の高まりを受け、みんなのコードが2024年3月に発表した「小・中・高等学校における情報教育の体系的な学習を目指したカリキュラムモデル基本方針」(以下、基本方針)をより発展・具体化し、次世代の情報教育の在り方を議論できるよう、以下の2点を新たに作成しました。
・第2章 各学校段階のカリキュラムモデル
▶️各学校段階での情報教育の目標、情報教育の6領域ごとの内容等について提示
・資質・能力系統表
▶️小学校(低・中・高学年)、中学校、高校ごとに、情報教育の6領域それぞれについて、資質・能力の3つの柱で整理
本カリキュラムモデル案の狙いは、各学校・学年段階で6領域にそれぞれ取り組むことで、螺旋的に資質・能力を発展させていくことです。そのため、各学校段階で分けて考えず、12カ年の継続した情報教育の全体像を捉えるための資料として、資質・能力系統表を公表しました。
なお、学習内容や、育成を目指す資質・能力は、各学校・学年の実態等に合わせて柔軟に変化していくことが求められるため、本資質・能力系統表も、各学校がカリキュラムを作る際の参考となることを想定しています。
【カリキュラムモデル案】
第1章 小・中・高等学校における情報教育の体系的な学習を目指したカリキュラムモデルの基本方針
第2章 各学校段階のカリキュラムモデル
第1節 小学校 「情報を学ぶ時間」
第2節 中学校 技術・情報科「情報分野」
第3節 高等学校 共通教科情報科「情報I」相当科目
参考資料
資質・能力系統表
授業事例
【12年間を通じた体系的な情報教育の枠組み】
- 小学校 「情報を学ぶ時間」の新設
- 中学校 「技術・情報」科の新設
- 高等学校「情報」の必履修科目の充実
【情報教育の6領域案】
A 情報と社会
B 情報デザイン
C コンピュータの仕組み
D ネットワーク
E アルゴリズムとプログラミング
F データと分析
これまでの提言・調査研究活動
みんなのコードは、小・中・高を通じた体系的・継続的な情報活用能力を育成する枠組みが必要であると考え、以下のアクションを行ってきました。
- 提言
- 2022年4月「2030年代の情報教育のあり方についての提言」
- 2023年4月「生成AIの初等中等教育でのガイドライン策定に向けた提言」
- 2023年7月 「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」への見解
- 2023年8月「2030年代の情報教育カリキュラムモデルを提案予定〜小学校・中学校・高校の学びを接続〜」
- 2024年3月「小・中・高等学校における情報教育の体系的な学習を目指したカリキュラムモデル基本方針」
- 調査研究
- 2021年4月「2020年度「コンピュータサイエンス教育」の カリキュラム開発に向けての実証研究」(宮城教育大学附属小学校と共同)
- 2021年12月 「プログラミング教育 実態調査報告書」
- 2022年4月 「2021年度「コンピュータサイエンス教育」の カリキュラム開発に向けての実証研究」 (宮城教育大学附属小学校と共同)
- 2022年6月「日本国内の大学における情報系学部・学科の実態調査」
- 2022年6月 「2021年度 教育課程特例校「NAiSUタイム」で取り組む特色ある教科づくりとプログラミング教育」(栃木県那須町と共同)
- 2023年4月「2022年度「コンピュータサイエンス教育」の カリキュラム開発に向けての実証研究」(宮城教育大学附属小学校と共同)
- 2023年8月「2022年度 プログラミング教育・高校「情報Ⅰ」実態調査」
- 2023年10月 「教育課程・授業時数特例校制度で取り組む特色ある情報・テクノロジー教育事例について」(栃木県那須町と共同)
- 2024年3月「千葉県印西市立・原山小学校における新たな学び「情報探究の時間」実践報告」(千葉県印西市立原山小学校と共同)
- 2024年5月「2023年度「生成AI100校プロジェクト」実践報告」
みんなのコード 代表理事 利根川裕太コメント
このたび、みんなのコードが提案するカリキュラムモデル案は、これまでの学校現場での実践や、みなさまからの貴重な意見を基に作成したものです。まずは、これまで共同研究や実証授業に協力してくださったすべての皆様に心から感謝を申し上げます。
これまで、子どもたちに「変化する社会に対応する力」を育成する必要があると言われてきました。しかし、「変化に対応する」だけでなく、子どもたちが情報活用能力を発揮しながら、「自ら新たな世界を創り出していこうとする」創造性も必要になってくると考えます。
情報教育を充実させることは、AI時代を生き抜く上で避けては通れない道です。次期学習指導要領について議論が始まるこの重要な時期に、私たちがこれからの情報教育について具体的な提案を行うことで、児童・生徒たちが、これから必要とされる情報活用能力を体系的に育成できる枠組みを築くための議論が充実することを期待しています。
みんなのコードは、引き続き、2030年代における情報教育のより良い仕組みづくりに向けて、全国各地の小中高との情報教育における研究、および関係者との議論を深めてまいります。
【本件に関する報道関係者からのお問合せ先】
特定非営利活動法人みんなのコード Code for Everyone
メール: pr@code.or.jp