「ミミミラボ」は石川県金沢市にあります。2021年7月から三谷産業株式会社とみんなのコードが運営しているクリエイティブハブです。クリエイティブハブは、「デジタルものづくり」をキーワードに、10代の子どもたちが気軽に、安全にテクノロジーに触れられる場です。
前編は、”大学生メンター自身の変化”に焦点を当てましたが、後編は、彼らの目に映った”子どもたちの姿”と、”この場所が持つ意味”について掘り下げていきます。
大学生メンター3人の視点から見た、子どもたちの活動や成長の変化が少しでも伝わったら嬉しいです。
子どものデジタルものづくり拠点「ミミミラボ」で得た“変化” 〜金沢の大学生メンター3名からみた景色〜(前編)
ミミミラボには、プログラミングやイラストなどのデジタル機材がそろっています。
しかし、メンターを経験した3人が口をそろえて話すのは、「それだけではない」ということでした。

子どもたちの「できた!」が生まれる瞬間
ー 子どもとの関わりの中で、印象に残っているエピソードはありますか?
金森さん
私は趣味で同人誌を作ったことがあるのですが、あるとき「漫画の同人誌をつくりたい。でもやり方がわからないから、漫画の描き方教えて!」と相談をしてくれた子がいました。それからネームの描き方などを教えていたのですが、絵はすぐに上達するのは難しいので、途中で描くことをやめてしまいました。
諦めちゃったかな…と思っていたのですが、しばらくしてから「小説にしてきたから、これを同人誌にしたい」と、声をかけてきてくれたんです。
そこから再び一緒に取り組み始めて、最終的には小説という形で同人誌を完成させることができました。完成した同人誌がその子の手元に届いたとき、本当に嬉しそうでした。私が初めて作った同人誌を手に取ったときの感情を思い出しました。
私が趣味でやってきたことを通して、だれかの“初めて”を後押しできたこと、「やってみたい!」が形になる瞬間に立ち会えたことは、何よりも嬉しい経験でした。
二瓶さん
プログラミングを学びに来ていた子がいたのですが、プログラミングについて教えたり、できたものを見せてくれたりした時間はとても印象に残っていますね。
その子は人見知りで、最初はなかなか僕に話しかけてこなかったんです。その様子を分かりつつも声をかけてくるのをじっと待ってみたら、恐る恐る話しかけてくれるようになりました。
そこから、まずは自分で調べてやってみて、どうしてもわからなかったら聞きに来てもらう、という関わり方を繰り返していたら、徐々に自信を持って話しかけてくれるようになりました。さらには、他の子たちともしゃべれるようになっていてたのも、すごく嬉しかったですね。
プログラミングができるようになっただけでなく、そのツールを通して人としても変わっていく姿を見られたことに、大きなやりがいを感じました。
高橋さん
私は音楽が好きで子どもたちとも話題にすることが多いのですが、好きだと話していた曲をDJで流してくれたことがありました。覚えていてくれたことがすごく嬉しかったですね。
いつも私の下の名前を呼び捨てで呼んでいた子がいたのですが、ある日、「さん」付けで呼んでくれたんです。「お姉さんになれた!」と嬉しかったのと同時に、その呼び方の変化から、その子なりの気持ちや距離感の変化を感じて、とても印象に残っています。
子どもたちと過ごす中で、そんな小さな成長や変化の瞬間に立ち会えることが、メンターとしての大きなやりがいだと感じています。
子どもたちとの“ちょうどいい距離感”とは
ー 子どもたちと向き合うとき、どんな距離感や姿勢を大切にしていましたか?
金森さん
最初は”先生”として接するべきなのか”と迷いました。でも実際は、友だちに近いけど少し違う、ちょうどいい距離感を大事にしていました。上下関係というよりは、横に並んでいる感じですね。
例えば、1人でゲームをして過ごすことが多い子に私から声をかけていたのですが、しばらくしてから、その子から声をかけてくれるようになったことがありました。「この人には話しかけてもいいんだ」と思ってもらえたのが嬉しかったです。
二瓶さん
関わり方としては、「介入し過ぎない、でも、一切手は抜かない」この2つを意識していました。例えば、子どもたちが作ったものを見せてくれた時に「ここがもう少しこうなったらいいんだけどな」と忖度なしに伝えることと、一緒にカードゲームをするときは一切手を抜かずに闘うというスタンスで向き合っていますね(笑)。
一緒に楽しむ時間と、一緒にひたすら悩んだり考えたりする時間を作ることで、子どもたちの成長に関われたらいいなと思っています。
高橋さん
その子にとって“話せる人が1人増えるような存在”になれたらいいなと思っています。先生でも親でもないけど、気軽に話せる“+1の存在”という感じです。なので、寄り添うことを意識して関わってきました。
例えば、ミミミラボに初めて来てくれた子は知らない人ばかりで緊張しているので、最初に関わるときには、なるべく答えやすい質問をするように心がけていました。3Dプリンターに触ったことがない子も多いので、形になるまでのプロセスを一緒にやってみることで、ミミミラボでできることや楽しさを伝えていました。
子どもたち一人ひとりと向き合う中で見えてきたこと
ー 子どもたちと関わる中で、どんな気づきがありましたか?
金森さん
「子どもって思っているより大人だな」と感じました。つい年齢で見てしまいがちですが、12歳や15歳の子なりにちゃんと考えていて、それぞれに悩みや選択がある。私は25歳ですが、25歳と12歳の選択の仕方が違うなと。
例えば、12歳の子が「これやってみたいんだけど、難しいからやめちゃお〜」と話しているのを聞くと、25年生きた視点からみると「いやいや、12歳から始めたらなんでもできるじゃん!」とちょっと押し付けがましい気持ちになるのですが、12年分の知見で世界にある無数の選択肢から日々決断していると思うと、私よりもっとシビアな世界で生きているなと思い、12歳もなかなか大変だなと思いました。
二瓶さん
一人ひとりに背景があるということです。学校でうまくいっていない子や、人との関わりが得意ではない子もいる。
だからこそ、「何かをさせる」のではなく、その子がミミミラボを“第3の居場所”としてどう過ごしたいかを大切にする必要があると感じました。

高橋さん
子どもたちに対して、みんな同じように接すればいいわけではないということです。その子によってやりたいことや性格が違うので、距離感や関わり方も変わってくる。その分、関係ができたときの嬉しさも大きいと思います。
ミミミラボだからこそ生まれる、子どもたちの“安心できる居場所”
―ミミミラボは、子どもたちにとってどんな場所であってほしいですか?
金森さん
子どもたちが成長していくには、「やってみたらできた!」と思える体験が大事だと思っています。最初は難しそうに見えても、実際にやってみて形になることで、自信につながっていく。その過程を見られるのが、この場所の特徴だと感じています。
挑戦も失敗もできる場所であってほしいです。子どもだからこそできる経験もあると思うので、いろいろ試せる場であってほしいなと思いますね。

二瓶さん
子どもたち一人ひとりが安心して過ごせる環境があることが大きいと思います。その上で、テクノロジーや活動があるからこそ、挑戦につながっている。
メンターの経験を通して、様々な最新機材があること以上に、その土台が重要だと実感しています。これからも、学校や家庭という背景を気にせずに、子どもたちが自分らしくいられる場所であってほしいです。
高橋さん
デジタル機材を使うこと自体が目的ではなくて、それをきっかけに人と関わることができるのが、この場所の特徴だと思います。
自然に会話が生まれたり、関係ができたりする場だと感じました。何かに縛られない場所であってほしいです。人との関わり方も過ごし方も、自分で選べる場所であり続けてほしいと思います。
3人にお話を伺い、ミミミラボで起きているのは、テクノロジーやものづくりなどの目に見える成果だけではなく、子どもたちの日々の変化であるということを改めて感じました。
- 誰かと話せるようになること
- 「やってみたい!」と思えること
- 自分のペースで過ごせること
そうした小さな変化の積み重ねが、子どもたちにとっての大きな一歩につながっていきます。そして、その一歩に寄り添うメンター一人ひとりの想いが、この記事で少しでも伝わったら嬉しいです。
(関連記事)
子どものデジタルものづくり拠点「ミミミラボ」で得た“気づき”と“自分自身の変化” 〜金沢の大学生メンター3名からみた景色〜(前編)

