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市内の全小中学校でやってみよう!〜 印西市生成AIパイロット校事業インタビュー 〜 前編

みんなのコード政策提言部/未来の学び探究部 部長の田嶋です。

みんなのコードは先日、印西市教育委員会とともに、市内の小中学校で広く活用できる「生成AIの導入授業パッケージ」および「児童生徒用生成AIハンドブック」を協働で作成したことを発表しました。

「みんなのコード、印西市教育委員会の生成AI利活用を支援。授業実践に役立つコンテンツなどを作成」

印西市教育委員会の西元指導主事と、みんなのコードの竹谷に、コンテンツ作成に至るまでの思いや苦労などを伺いました。

今回は、そのインタビューの前編をご紹介します。

市内のみんなで、まずはやってみよう!

(中)西元知仁指導主事(印西市教育委員会)、(右)竹谷正明(みんなのコード)、(左)田嶋美由紀(みんなのコード/聞き手)※ 肩書きはインタビュー当時

── 2025年度、印西市からは、全国最多の14校(校務利用11校、教育利用3校)が文部科学省の生成AIパイロット校(以下、パイロット校)として指定されました。事業開始時、どのような思いや狙いがあったのか教えてください。

西元指導主事(以下、西元):
生成AIが子どもたちを含めた日常生活の中に浸透していく中で、AIへの取り組みは避けて通れないというのが教育委員会としての見解でした。

生成AIの活用を広めるため、まずは多くの学校に協力いただき、学校が使いやすい事例をたくさん創出していくことを目指しました。

── パイロット校として応募する学校は、どのように決定しましたか?

西元:
教育委員会から学校に依頼しました。2025年度はICT・AI活用を進めるため、市内の全ての学校(小学校18校、中学校9校)に、文科省の「生成AIパイロット校事業」か「リーディングDXスクール事業」のどちらかに関わってもらいたいという思いがありました。そこで学校を約半数ずつ、両事業に振り分けて、文科省に申請し採択されました。

印西市はもともと「情報」への取り組みを市の特徴として推しており、この姿勢は学校にも伝わっていると思いますので、現場も覚悟をもって両事業に臨んでいただいたのではないかと思います。

また、生成AIについては、印西市がこれまで取り組んできた情報活用能力の育成を土台に、スムーズなスタートが切れるのではないかという期待もありました。

── 全国的には、市内で少数のモデル校をつくって、その取り組みを徐々に横展開していくというやり方も多い中で、初期段階から「みんなでやろう」という意思決定をされたのですね。

西元:
まさに「みんなでやる」という機運を作ったのがポイントです。

パイロット校事業の中では、全ての指定校と教育委員会が参加するチャットスペースを作成しました。その中で、他校の実践を知って「こんなこともできるんだ」と気づき、自校の事例創出に生かしていくという流れを生み出せたのが良かったと思います。

学校同士の横のつながりがあることで、「うまくいかないこともあるけれど、他の学校でも同じように苦労しているんだな、やってみよう、頑張ろう」と思ってもらえたのではないかと感じています。

一歩目のハードルを下げるために、環境を整える

── 今回、みんなのコードは、主に導入授業のための学習指導案や児童生徒ハンドブック、市のガイドラインの参考資料など、「域内展開ツール」の作成をご一緒させていただきました。こうしたツールの作成の構想は、いつから考えられていたのでしょうか。

西元:
事業を進めるうちに、特に教育利用については先生方のハードルをいかに下げるかが重要であることに気付きました。

今までは、みんなのコードさんに生成AIの導入授業を伴走いただいていましたが、全ての学校の支援をお願いすることは現実的ではありません。また、市としても自走していきたい思いがありました。

とはいえ、授業でAIを利用することに不安があり、どのように扱ったらよいかわからない先生に「AIの授業をやりましょう」と言うだけでは取り組みは進みません。参考になる学習指導案を用意するなど、自分たちでAIの授業が実施できるような環境を整える必要がありました

また、教員や外部講師がAIについて授業した後、子どもたちが「あれってなんだっけ?」と振り返りたくなったとき、手元で参照できるようなものも必要だと思ったんです。

教員用の指導案・授業スライド・ワークシートと児童生徒用のハンドブックを作成・配布することで、先生たちの一歩目のハードルを下げ、「まずはこれを参考に授業をやってみよう」と思ってもらえればと考えました。

ハンドルを握るのはあなた、生成AIは学びのアシスタント

── 指導案やハンドブックは、小学校3年生から生成AIを学ぶことを想定して作成しましたね。

西元:
総合的な学習の時間などで、検索エンジンを本格的に使うのが小学校3年生です。そこに、必ずAIもセットで関わってくるので、中学年からAIリテラシーを身につける必要があると教育委員会内で話し合いました。

検索エンジンにAIが当たり前のように組み込まれるようになって、AI機能を使わないようにするにはどうしたらいいのかと考えたこともあったんです。ですが、AIが備わっていることが自然になる中、制限するよりもリテラシーを身につけることを考えた方がいいだろうと結論づけました。

しかし、小学校の中学年で、どのようにAIを扱うのがいいのかという知見はなかったので、中学年も想定した指導案やハンドブックを作成いただけたのは非常に助かりました。

竹谷:
学年が低ければ低いほど、AIのことを一瞬で「答え」を出してくれるすごい機械、すごい相手だと思ってしまいがちです。「これを使えばいいんだ」と依存してしまう危険性も高いのではないでしょうか。

今まで、小学校高学年で生成AIの導入授業をサポートしてきた経験から、中学年と高学年の授業を構想しました。AIに依存せず、適切な距離を取れるようになるためには、どのように伝えたらいいのか悩みました。AIの出力は計算の結果でしかないなどと、しくみを詳しく説明しても逆によくわからなくなります。

そこで今回、中学年の授業では「ハンドルをにぎるのはあなた」という言葉を最後のスライドに置きました。AIはあくまで道具であり、使うかどうか、何のために使うかを決めるのは自分自身だということを、難しい説明抜きで感じとってほしいという願いを込めました

高学年の授業では、そこから一歩進んで「かしこく使おう」というタイトルを冒頭に置きました。かしこく使うというのは、ただ便利に使うというだけではなく、AIの限界を知った上で、自分の判断を手放さないで使えるということです。中学年でAIと実際に関わる経験を積み、高学年でその経験を批判的に問い直す力へとつなげていく、そういう2段階を意識しました。

また、「AIはパートナー」という表現をよく聞きますが、今回のハンドブックでは、あなたが主体で、あくまでそれを支えるものなんだよということを強調するために「AIはアシスタント」という表現をこだわって使いました

▲作成した児童生徒用ハンドブック(抜粋)

西元:
「ハンドルを握るのはあなた」という記述は、ハンドブックのまとめのページにも書いてありますね。この表現がとても気に入っています。自分の考えを完全にやってもらうのではなく、自分がやりたいことがまずあって、AIは補完的に関わっていく。やっぱり、あなたが主人公なんだよという打ち出し方が、子どもたちにも分かりやすいと思います。

竹谷:
ハンドブックは、小学校3年生から中学生が活用するというお話でした。中学生が使うことを考えると、もう少ししくみなどの話に突っ込んだ方がいいのかな、逆にこれは中学生には簡単すぎるかな、など盛り込む内容や表現について頭を悩ませました。また、技術がどんどん進歩していく中で、どんなものが出てきても、心構えは変わらないことを伝えられるよう心掛けました。

全ての漢字にルビを振ったのもこだわりです。小学校3年生が読むということもありますが、学年が上だからといって、スラスラ漢字が読める子ばかりではないし、読みに課題がある子にも、配慮できればという思いがありました。

西元: 
中学生にとっても、非常に読みやすい内容にまとめていただいたと思います。また、子どもたち向けに作ったものではあるのですが、ICT関係が得意ではない先生たちにとっても、注意点などがまとまっていて分かりやすいのではないかと思います。小学生から教員まで、幅広く活用できそうですね。


印西市がどのような思いで文科省のパイロット校事業に取り組み、みんなのコードがどのように授業実践に役立つコンテンツを作成したのか、お二人のインタビューをご紹介しました。

次回の記事では、1年間でどのような成果と課題があったのか、今後の普及の方針などに関する、インタビューの後半をご紹介したいと思います。

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