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AI利活用の手応えがすべての教員に広がるように〜 印西市生成AIパイロット校事業インタビュー 〜 後編

みんなのコード政策提言部/未来の学び探究部 部長の田嶋です。

みんなのコードは先日、印西市教育委員会とともに、市内の小中学校で広く活用できる「生成AIの導入授業パッケージ」および「児童生徒用生成AIハンドブック」を協働で作成したことを発表しました。

「みんなのコード、印西市教育委員会の生成AI利活用を支援。授業実践に役立つコンテンツなどを作成」

前回の記事では、印西市の生成AIパイロット校(以下、パイロット校)事業の狙いや、このコンテンツ作成に込めた思いについて印西市教育委員会の西元指導主事と、作成に携わったみんなのコードの竹谷のインタビュー前編をご紹介しました。

今回は、パイロット校の成果と課題、コンテンツ展開の展望など、インタビューの後半をご紹介します。

AI利活用を一部の教員の負担にしないために

(左)西元知仁指導主事(印西市教育委員会)、(右)竹谷正明(みんなのコード)
※ 肩書きはインタビュー当時

── 1年を終えて、教育委員会として成果と感じていること、今後の課題だと思うことをそれぞれ教えていただけますか。

西元指導主事(以下、西元):
まずは1年間、多くの学校にパイロット校としてご協力いただき、校務利用について多様な実践事例が創出できました。活動のイメージをもち、一歩目が踏み出せるよう、多くの実践事例を知りたいという先生方の声に応えられるような取り組みができたと思います。教育利用については、指導案やハンドブックを作成できたことが大きいですね。

課題の一つは、どうしても得意な先生に負担が偏ってしまうことでしょうか。もちろん、全ての先生が深く理解している状態をいきなり目指すのは難しいですが、まずは全員が生成AIに触れてみる、ある程学校全体で活用しているという状態を目指したいです。

── この課題はAIに限らず、少し前はGIGA端末などICTの活用でも同じ構図がありました。校内体制など、どのような工夫が考えられるでしょうか。

竹谷:
一つの工夫として、校内で3人の担当者を決めるというやり方がありますね。担当するのが一人の情報主任だけだと、「ICTはあの先生の担当だよね」という空気になってしまい、負担が集中したり、他の先生の実践につながらないということをよく聞きます。

私も、電子黒板が現場に入り始めたときに小学校教員をしていました。その際「低学年はA先生、中学年はB先生、高学年はC先生。この3人を核にして活用を進めよう」とやってみた結果、校内での活用が広がっていったという経験があります。

一方で、取り組みが属人化してしまうと、その先生の異動後に誰もやらなくなってしまうこともあります。そういう意味でも、核となる人が複数いれば、質問先も分散するし、あまり得意でない方をチームでサポートできるのが良いと思います。

今回、印西市は「みんなでやる(すべての小中学校が参加する)」という体制を市全体で作りましたが、それを学校内でも感じられる体制づくりができるといいのではないでしょうか。

「管理職も含めて3人参加」の研修の良さ

── 「校内で3人担当者」に関連するのですが、2025年度は研修に各学校から3人の先生をお呼びしたと伺いました。

西元:
校務利用のパイロット校については、1校につき教頭先生を含めた3人を研修にお呼びしました。研修参加者からは「生成AIって面白いな」「魅力を感じるかも」というお声をいただき、活用に向けたいいきっかけになったと思っています。

竹谷:
学校から複数名に来てもらう研修はとてもいいですね!多くの研修は、一人が参加して校内に伝達すればいいと思われがちですが、実はそのやり方ではあまり広がらないんですよ。先ほどの「校内で3人コアメンバーが必要」という話とも関連します。また、管理職の方を含めて複数参加としているのも素晴らしいです。

学校内への広がりが課題とのことでしたが、このような取り組みは、必ず今後の広がりにつながってくると思います。

西元:
管理職の理解が必要だということと、生成AIの可能性を考えると、多忙になりがちな教頭先生の業務と相性がいいだろうなと思ったんです。

竹谷:
わかります!先日、別の自治体の研修で講師を担当したのですが、終わった後、副校長先生がいらっしゃって「竹谷さん!こんなこともできますよ!」と興奮気味に話しかけてきてくださいました笑。管理職の方に良さをわかっていただくのも、その後の広がりを考えると重要です。

ジェンダーの観点でも、複数の教員が参加するのは良い取り組みだと感じます。みんなのコードでは2021年度から、小学校女性教員向けのプログラミング研修「SteP」を実施してきました。2020年のプログラミング必修化に向けて私たちが実施した「プログラミング指導教員養成塾」の参加者の8割以上が男性だったことに違和感を覚えて実施した取り組みです。

プログラミングやICT関連の研修参加が男性教員に促される傾向があるのですが、同じことが生成AIでも起こらないよう、研修参加者自体を増やすという工夫が、他の自治体でも広がると良いですね。

生成AIが可能性を広げるという手応え

── 現場の先生方は、今回のパイロット事業をどのように受け止めていましたか。

西元: 
最初は様々な反応をいただきました。正直、申請・採択・事業開始と、慌ただしく進んだので、何をどのように進めるか、走りながら考えていった面もあったんです。

その中でも、日々の生活の中でAIを利用している先生については、教育利用でも校務利用でも「こんなことができるんじゃないか」と積極的にアイデアを出して活用する姿が見られました。
一方、ICTが苦手な方も一定数いらっしゃいます。最初は何をやっていいかわからないという声もありましたが、得意な方に「こんなこともできますよ」とリードいただくことで、徐々に利活用が広まっていったと感じています。

安全点検簿アプリをVibeコーディングで作成した先生もいて、「今まで自分たちだけではできなかったことが、生成AIによって可能性が広がる手応えを感じた」という声も聞いています。

2025年度のパイロット事業は、教育委員会から学校にお願いする形で始まりましたが、「2026年度も継続したいです」と言ってくださる学校が複数出てきたことも、1年間の種まきの成果ではないかと思います。

▲ 市内の事例をまとめたガイドライン補助資料集(抜粋)

── 公開学習会などで、他の自治体の事例もご覧になったと思います。ここは印西市の強みだな、ここは今後取り入れていきたいな、など感じられたことはありますか?

西元:
事業の進め方は、自治体ごと特色があると感じました。市教委が引っ張ってサポートしながら進めているところもあれば、学校にほとんどの裁量を任せている自治体もありました。印西市は、そのちょうどいいところを取って進められたと思います。学校同士が情報交換できる横のつながりは、他の地域に負けないという実感をもちました。

一方、学校数が多かった分、各校との関わりが薄くなってしまったという反省もあります。活動の成果を学校と一緒に分析していた教育委員会もあったので、そのような関わり方も取り入れていきたいです。

2026年度以降の取り組みに向けて

── 今後の展望について教えてください。

西元:
指導案やハンドブック、校務の利用事例を含めたガイドラインの補足資料など、2025年度に作成したものについては、4月に全学校に周知しています。今後、これらを各学校の校務や授業に落とし込むために、まずは夏の研修で広めていきたいです。

校長会議・教頭会議が月に1回あるので、そういった機会に改めて周知もしたいですし、学校に対して「こういう生成AIの活用事例があるので、この時期に使ってみませんか?」というような情報発信もしていきたいですね。

今年度のパイロット校の指定校は、教育利用が3校、校務利用が5校の計8校となりました。学校数を減らした分、各学校への支援を増やしていきたいですし、さらに取り組みをブラッシュアップしたいと思います。

また、各学校では、年度はじめに端末活用の同意書を取得するのですが、今年度からは生成AI活用の同意書も一緒に取ることにしました。今は同意書だけですが、保護者の方への情報発信も、これから考えていきたいです。

先日、「印西市教育ビジョン 2026-2030」を策定しました。この中でも、AIというキーワードが盛り込まれています。教育委員会のみならず首長部局とも協力して、引き続きAI利活用に取り組んでいきたいと思います。


2回にわたり、印西市・西元指導主事とみんなのコード・竹谷のインタビューをご紹介しました。

みんなのコードは、今後も印西市教育委員会と連携し、生成AIを含むテクノロジーがもたらす新しい学びの形を支援していきます。

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