こんにちは。みんなのコード理事会長の利根川です。
現在、学習指導要領改訂に向けた中央教育審議会での議論が進行中です。
「学習指導要領」とは、全国どこの学校でも一定の水準が保てるよう、文部科学省が定めている教育課程の基準で、子供たちの教科書や時間割はこれをもとに作られています。これまでおよそ10年に1度改訂されており、現在はこの「10年に一度の大きな節目」に当たっています。
みんなのコードが2022年から提言してきた情報教育の充実についても、方向性が示されつつあり、私が委員を拝命している中央教育審議会 デジタル学習基盤特別委員会(第11回/10月1日開催)でも「次期学習指導要領に向けた審議における情報活用能力の抜本的向上に係る検討の状況について」と題して、これまでの議論の説明が行われました。世の中の注目度が高い分、会議でも言及があったように誤った解釈もされているようです。
そこで今回は、情報教育の何が変わるのかを、特に「時数」(授業時数)に注目して、みんなのコードの目線から簡単にご紹介したいと思います。
どのくらいの時間で何をやるのか
次期学習指導要領では「情報活用能力の抜本的向上」が大きなテーマとして掲げられ、小学校の総合的な探究の時間に「情報の領域」が付加されるとともに、中学校の「技術・家庭科」は二つの教科に分かれ、新たに「情報・技術科」が創設されることになりました。(以下、”新教科・領域”と総称します)

※ 教育課程企画特別部会「論点整理(案)」p.52
新教科・領域に必要な授業時数は現時点で、小学校3年生〜6年生で最大30〜35コマ、中学校1〜2年生で最大70コマ、中学校3年生で35コマと示されており、具体的な実数は引き続き精査・検討することになっています。

※ 教育課程企画特別部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ(案)」p.77
この時数は、2025年9月から12回にわたって開催された教育課程部会 情報・技術ワーキンググループをはじめとする場で
- これからの社会で求められる資質・能力を十分に育成できているか
- 教育課程の肥大化を招かない範囲の必要かつ十分なものとなっているか
- 各教科等での探究的な学習をはじめ豊かな学びの基盤として支えることができる、教育課程全体への波及効果が大きい学習内容となっているか
などの視点を踏まえ、各学年・各コマに必要となる学習内容まで検討した上で考えられたものです。
例えば、小学校4年生では「同じ写真をもとに、全体や一部を切り出して情報を伝えようとする体験を通じて、同じ事物でも伝え方や内容が変わり、受け手の印象も変わることを確かめる」といったメディアリテラシーの内容なども含む、以下の学習イメージが示されています。

※ 教育課程企画特別部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ(案)」p.782
※ 同様の学習イメージが小3〜中3の各学年で示されている。
「ただ増やす」だけではない
新教科・領域で扱う内容は、全てが新しいものばかりではありません。
例えば現在、タイピングや表計算・文書作成ソフトなどの指導は体系的に整理されておらず、各教科等の中で必要に応じて扱うことになっています。そのため、指導の重複があったり、まとめて指導できずかえって時間がかかったりしていることがあります。このような全ての教科等に共通して必要な端末・各種アプリの基本的な使い方も、新教科・領域で扱うことになります。
また、現在小学校では、算数と理科でプログラミング、社会で情報技術の社会的役割などを扱っていますが、こうした内容を新教科・領域で引き取ることも検討されています。

※ 教育課程企画特別部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ(案)」p.808
このように、新教科・領域がどのようにすれば「各教科等での探究的な学習をはじめ豊かな学びの基盤として支えることができるか」という視点で、扱う内容を検討している点に着目すると情報に関するものを闇雲に増やし、他の教科等の教える内容はそのまま、時間数だけ減らすというような方向性ではないということが分かると思います。
結局、何をどのくらい減らす?
今回の改訂議論では「年間標準総授業時数は増やさない」という大前提を掲げているので、新教科・領域を創設することで、もちろん何かを減らさなくてはなりません。国の資料を見ると、以下のように方針が記載されています。
- (略)必要な授業時数を、特定の教科・領域の標準授業時数を減じて確保することは適当ではなく、各教科等の標準授業時数に応じて同一の考え方で減じて確保することが適当である。
- (略)いずれの教科等についても、学習の継続性などの観点から少なくとも週1コマ程度の時数は確保することが重要であることから、現在標準授業時数が35コマ以下の教科等からは減じないことが適当である。
- 以上を踏まえると、追加で要する時数の確保に向け、小学校3年以上の各教科等の標準授業時数について、現在35コマ以下であるものを除いた教科・領域から、それぞれの既存の授業時数に対して一定の割合で時数を減じることとし、その具体は、新教科・領域で必要となる各学年の追加時数を確保できる水準とすべきである。その場合、各学年で追加で要する時数と対象となる教科等の時数を踏まえれば、一律で3-4%程度の時数を言わば「広く薄く」減ずることとなると考えられる。
- 以上を踏まえつつ、各教科等の標準授業時数の具体的な実数については、引き続き、教育課程全体の議論の進捗を踏まえて精査を行った上で教育課程企画特別部会で検討し、適切なタイミングで示すべきである。
これは言い換えると
- 国語と算数だけなど、特定の教科の時間だけを減らすことはしない
- 週1コマだけの教科等は減らさない
- それ以外の教科等から、一律で3-4%程度を減らす
ということです。
引き続き、先に挙げたような「これは新教科・領域で引き取る」という観点も踏まえ、教育課程全体が最適な形になるような検討が行われていくものと考えています。
「みんなで育む」ために必要なことは?
国の資料をよく読むと、なぜ今回のタイミングで新教科・領域を新設するのか、教師の負担に対してどのような方策を取るのか、環境整備はどうするのか、などについても具体的に言及されています。また、なかなか原典にあたる機会はないかと思いますが(あたったとしても膨大ですよね・・・)、学習指導要領に関する議論は、情報教育以外でも様々に積み重ねられています。
今回の改訂の基盤となる考え方には「自らの人生を舵取りすることができる 民主的で持続可能な社会の創り手をみんなで育む」と掲げられています。

※ 教育課程企画特別部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ(案)」p.403
情報教育を取り巻く変化も、こうした大きな目指す方向性を実現するための、一つの切り口に過ぎません。これから目指したい大きな教育像は何か、そのために「みんな」の一員である私たちには何ができるのかを、引き続き、多面的に議論していくことが大事ではないでしょうか。
みんなのコードも研修や教材提供など、現場の力になれることは何かを考えていきたいと思いますし、私個人も情報教育のためにできることを、今後も実践していきたいと思います。
(関連記事)情報教育の次期学習指導要領改訂議論から、2025年を振り返る
https://note.com/codeforeveryone/n/n934adaa02454
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