お知らせ

みんなのコードと栃木県那須町、2021年度報告書を発表

調査報告書

〜教育課程特例校「NAiSUタイム」で取り組む特色ある教科づくりとプログラミング教育〜

 このたび、​特定非営利活動法人みんなのコード(東京都港区、代表理事:利根川 裕太、以下みんなのコード)は、栃木県那須町(町長:平山 幸宏、以下那須町)との2021年度の取り組みをまとめた報告書を発表しました。本報告書は、教育課程特例校の仕組みを活用した特色ある教科づくりを後押しできるよう、那須町の取り組みや授業事例をわかりやすくまとめたものです。

 本プロジェクトは、株式会社セールスフォース・ジャパン(東京都千代田区、代表取締役会長 兼 社長:小出 伸一)の、若者の教育支援を目的とした助成により実施しております。

本プロジェクトについて

 那須町は、人口約2万3000人の自然環境が豊かな観光と農林業の町です。多くの自治体と同様に、那須町においても人口の減少が大きな課題となっています。2020年10月に発表された総務省の国勢調査によると、那須町の15歳未満の人口は、2000年は4,054人だったのに対し、2020年には約半分の2,157人に減少。こういった背景から、那須町は学校適正配置に取り組み、小中学校を17校から8校に再編しました。

 教育課程特例校制度は、文部科学大臣が、学校教育法施行規則第55条の2等に基づき指定する学校において、学校又は地域の実態に照らし、より効果的な教育を実施するための特別な教育課程を編成することを認める制度です。文部科学省が公表している「教育課程特例校一覧」(2022年4月時点)によると、教育課程特例校に指定されている学校は1,823件です。そのうち、情報、プログラミングやコンピュータ関連の取り組みを行っている学校は70件となっています。

 那須町では、2019年度より、将来の地域の発展を担う人材の確保を目指す一環として、文部科学省「教育課程特例校」の指定のもと、プログラミング・人間関係・防災教育を学ぶ、全国でもユニークな教科「NAiSU(ナイス)タイム」を全町立小中学校に設置し、プログラミング教育にも積極的に取り組んできました。

 本プロジェクトは、那須町とみんなのコードが協働し、那須町ならではの地域の課題を題材に、プログラミングを含むテクノロジー教育に各学校が取り組めるよう、2ヵ年にわたり推進連携事業を実施するものです。

https://speakerdeck.com/player/400d1e9e8e7f471da5243c0cbd021285

2021年度の実施内容

 2021年度は、プログラミング教育推進校の指定を受けた東陽小学校、那須中学校を重点的に支援しました。前期は教員向け研修会を実施し、後期から授業支援に携わりました。

東陽小学校での支援の様子

 特に4年生と5年生の授業では、学年を横断した実践を行いました。5年生は、スクラッチを使ってタイピングゲームを作りました。4年生は、5年生が作ったタイピングゲームをもとに問題を見つけ、機能を追加する作業を行いました。このように連携することで、下級生が抵抗感なくプログラミングに取り組めるよう工夫して授業を展開しました。

那須中学校での支援の様子

 生徒たちは、教員から教わるだけではなく、教室内を自由に移動し、クラスメイトと教え合いながら学習を進めていきました。また、苦手意識を持っている生徒を集め、講義形式の指導も同時に行い、それぞれにあったプログラミングの授業を展開していきました。

 授業後には、生徒を対象にアンケートを実施しました。コンピュータの大切さについては95.1パーセント、楽しさに関しては90.2パーセントの生徒が肯定的な考えを持っていました。一方、コンピュータを使って身の回りの問題を課題解決ができると認識している生徒は41.5パーセントでした。このことから、今年度は基礎的な内容だけではなく、アプリケーションの作成にも挑戦し、テクノロジーを使って、生徒たちが身近な問題を解決できる授業を実践していきます。

2021年度の成果

●実際の児童生徒の学習活動を通して、教員が具体的な授業イメージを持つことができました。
●小学校では、ICTに堪能な教員でなくても徐々に自力で授業を進められるようになり、その課程で児童と共に授業作りをすることの価値に気づけました。
●中学校では、技術科に限らず複数の教員が授業作りに関わることにより、不安感を低減するとともに、継続して取り組む意欲を引き出すことができました。

2022年度に向けて

那須町全体を通して

町全体へ取り組みを広げられるように実践事例の周知と、年間指導計画に沿って計画的な指導を行っていきたいと考えています。また、NAiSUタイムの他の柱である防災プログラム、人間関係プログラムや地域学習とも関連づけた課題を扱い、探求的な学習をサポートしていきます。

小学校

教員が小さな課題解決学習の過程を体験し、自らの授業に取り入れていけるような研修を進めていきます。さらに、授業準備を効率的に行えるよう、これまで実践した授業の構成をクラウド上でテンプレート化し、簡単にアレンジして実践できる環境を整えていきます。

中学校

重点校である那須中学校での取り組みを継続しつつ、外部からのサポートなしでも教員が授業を進められるようにサポートしていきます。加えて、近隣中学校でも同様の実践ができるように支援していきます。

 今後みんなのコードは、那須町の教育課程特例校を活用したプログラミング教育の取り組みを新たなモデルケースとして、それぞれの地域や学校での特色ある教科づくりを後押しできるよう、サポートしてまいります。

関係者からのメッセージ

栃木県那須町 教育長 平久井 好一氏

 本プロジェクトは、みんなのコードと株式会社セールスフォース・ジャパンに、那須町が教育課程特例校「NAiSUタイム」で取り組んできた「特色ある教科づくりとプログラミング教育」を支援いただくことができ、大変嬉しく思っております。

地方においては、プログラミングやIT教育に恵まれないことが多く、町を上げて力を入れていかないといけないという課題意識を持っています。「先行き不透明なこれからの時代にあたり、主体的でたくましく生きていける人材を育てたい」という那須町が掲げているビジョンをもとに、本プロジェクトを通じて、子供たちがテクノロジーでより豊かな那須町を作る、未来の担い手になることを期待しています。

株式会社セールスフォース・ジャパン 専務執行役員 公共営業統括本部 統括本部長、支社営業統括本部 統括本部長 兼 韓国リージョン統括本部 統括本部長 伊藤 孝氏

 このたび、那須町とみんなのコードが取り組む、教育課程特例校の仕組みを活用した独自の教科「NAiSUタイム」でのプログラミング教育を、当社が支援させていただけることを大変光栄に思います。当社が大切にする価値観のひとつである、すべての人々の「平等(イクオリティ)」は、みんなのコードの「全ての子どもたちがプログラミングを楽しむ国にする」というミッションと共通するものがあります。私たちは、全ての子供たちが世界に通用するテクノロジーの知識やスキルを持ち、将来世界で活躍する未来の担い手を増やしたいと考えており、本プロジェクトを通じて子供たちが質の高い情報教育を受けられるよう、支援してまいります。

NPO法人みんなのコード 代表理事 利根川 裕太

 今回、株式会社セールスフォース・ジャパン様のご協力のもと、那須町と協働して、教育課程特例校「NAiSUタイム」で取り組む特色ある教科づくりとプログラミング教育に取り組むことができ、大変嬉しく思います。他の地域においても課題としてある、人口減少傾向に対し、いち早く解決に向けてNAiSUタイムを導入している那須町の取り組みは大変意義のあるものだと感じております。

 私たちは、那須町の教育課程特例校を活用したプログラミング教育の取り組みを新たなモデルケースにしたいと考えており、今後、他の地域・自治体でも同様の取り組みを支援していきたいと考えています。

本件に関する報道関係者からのお問合せ先

特定非営利活動法人みんなのコード Code for Everyone
広報担当:浜田
メール: pr@code.or.jp
代表電話: 03-4595-0150