特定非営利活動法人みんなのコード(神奈川県横浜市、代表理事:利根川裕太、以下「みんなのコード」)とキンドリルジャパン株式会社(東京都港区、代表取締役社長:ジョナサン・イングラム、以下「キンドリル」)は、2023年度よりパートナーシップを締結し、広島県の「商業高校の情報教育改革支援」を行いました。
商業高校における情報教育の課題
高等学校では、2022年度入学生より「情報I」が必履修となりプログラミングが必修内容となりました。2024年度の3年生からは、「情報I」が大学入試共通テストにも新設され、国公立大学を受験する際には原則必須科目となっています。これら「情報I」では、「何を学ぶか」から「学んだことをどのように生かすか」という生徒の主体的な問題発見・解決能力の育成が重視されています。また、共通テストのサンプル問題においても同様に、「知識」だけでなく「知識を活用して問題解決に向けた思考を行う」ことの重要性が明確に示されています。
一方、商業高校をはじめとした専門学科においては、「情報I」を履修せず、各専門科目内の「情報I」代替科目を履修することになっています。全国に約600校ある商業高校には、情報処理科を設置している学校も多く、そこには、情報系の進路を志す生徒が希望を持って入学しています。しかし、商業高校で行われるプログラミングの授業は、検定試験のための内容に留まり、デジタルの価値を創造するスキルや、情報系のキャリア観を身につける機会を生徒に提供できている教員が少なくありません。
こういった背景から、広島県の現場の教員から「生徒に育むべき資質・能力」への転換に十分に対応できていないのではないか、という問題意識を共有いただきました。そこで、みんなのコードは、広島県内4校の商業科と連携し、今後の社会における産業界の変化にも対応していこうとする生徒を育成することを目的に、プログラミングを含む「情報教育」のあり方をアップデートするための取り組みを実施しました。
2023年度の取り組み
2023年度は、地域における情報教育へのアクセスを向上させることを目指し、特に教員への支援を行いました。
⚫︎実施内容
【教員対象】
▶️教科「情報」教員研修
各高校の要望に応じて、教員研修を実施しました。
研修内容は、以下のとおりです。
- Pythonを使ったプログラミング実践
- 大学共通テストの概要
- AIと学校教育
- エンジニアによるWebアプリ開発実習
▶️オンラインでの授業作りサポート/相談会
商業高校の教員からの授業に関する疑問に、いつでもオンラインで応えられる状況を整えました。元高校の情報科教員であるみんなのコード永野がサポートを担当しました。
▶️キンドリル社員と教員の交流会
学校での学びと社会の関わりを、教員が生徒に温度感を持って伝えられることを目指し、広島商業高校の教員とキンドリルの社員の方々がリアルで交流する機会を設けました。対話の中で、高校での情報の学びが、生徒の歩む未来にどう繋がっていくのかを実感していただくことが出来ました。
【生徒対象】
▶️キンドリル社員によるキャリア授業
キンドリルの社員の方々にキャリアに関する授業をしていただきました。情報の授業で学ぶことは、実際の社会でどのように役に立つのか。情報系の進路選択に関わらず、社会で求められる基礎的能力や、社会人になっても学び続ける姿勢を生徒たちは学びました。
(左:キンドリル社員によるキャリア授業、右:キンドリル社員と教員の交流会)
【受益者数】
- 参加した生徒 215名
- 参加した教員 57名
- キンドリルのボランティア社員 3名
【受益者の声】
- 教員の声
- キンドリルの社員さまから身近な事例をたくさん紹介していただき、プログラムの基礎を覚えなければいけない従来の研修と違い興味が高まりました。単なる技術がプログラミングの授業の目的ではなく、学んだ知識を活用し身近な不満を解決することの重要性を生徒たちにも伝えていきたいと思います。また、これからの予測不能な時代を生き抜く生徒のために、我々教員も変わらなければならないと強く感じました。そのためには、教員側もまずはやってみることが大事ですね。苦手意識はまだありますが、生徒たちのためにまずは自らが学び、それを実践、生徒に教えられるようにやっていきたいと思います。
- キンドリルの社員さまから身近な事例をたくさん紹介していただき、プログラムの基礎を覚えなければいけない従来の研修と違い興味が高まりました。単なる技術がプログラミングの授業の目的ではなく、学んだ知識を活用し身近な不満を解決することの重要性を生徒たちにも伝えていきたいと思います。また、これからの予測不能な時代を生き抜く生徒のために、我々教員も変わらなければならないと強く感じました。そのためには、教員側もまずはやってみることが大事ですね。苦手意識はまだありますが、生徒たちのためにまずは自らが学び、それを実践、生徒に教えられるようにやっていきたいと思います。
- 生徒の声
- プログラミングはパソコンにしか関係ないと思っていたが、信号機や自動販売機など身近なものにも関係があることに驚いた。
- 技術的なことや基礎的なことはもちろん大事だが、学び続ける力も活躍する人材としての一つの要素として、とても重要なものであることがわかった。
- 技術力によって実現できたことに注目するだけでなく、今後さらに実現できそうなことまで考えることが大切という話が印象に残った。
関係者のコメント
- キンドリルジャパン株式会社 Social Impact(社会貢献)担当部長 松山 亜紀
日本におけるIT人材の不足は喫緊の課題となっており、また、情報教育が必修化される中で、キンドリルジャパン株式会社としては、企業が教員や生徒のIT系のキャリアへの認知を高め、不足しているデジタル人材の増加に寄与する重要性を感じております。そのような中でみんなのコード様からのご提案を受け、この度、広島県での商業高校の情報教育改革への取り組みにご一緒する機会をいただきました。この取り組みにより、教員の皆様の取り組みが一層充実し、生徒の皆様の情報教育へのアクセスが向上し、ひいてはIT業界で活躍する人材の育成に貢献できることを願っております。
- 広島商業高校 商業教育推進部 商業統括主任 教諭 山縣 達也
キンドリル様とみんなのコード様には、商業高校でのプログラミング教育推進に御支援いただき、大変感謝しております。商業高校におけるプログラミング教育の必要性は、ビジネス社会で求められている論理的思考力や問題解決能力等が育成されることにあります。そのため、これまで教員はプログラミング教育の在り方について、試行錯誤しながら、議論を進めて参りました。しかし、学校現場しか知らない我々教員だけでは限界を感じることがたくさんありました。そのような時に、キンドリル様とみんなのコード様に支援をいただきました。授業づくりの支援、生徒や教員に対する研修会等を実施していただき、プログラミング教育の具体的な方向性を見つけることができました。本当に感謝しております。今後とも、広島県の情報教育の充実のため、御指導のほどよろしくお願いいたします。
- みんなのコード 代表理事 利根川裕太
商業高校において、情報教育向上に対して情熱を持つ教員からの声を受け、キンドリル様の深い理解とご支援を得てこのプロジェクトを進めることができたことに深く感謝しています。キンドリル様とのパートナーシップ締結をきっかけに、様々な角度から情報教育の質を高め、未来を生きる若者が直面する課題を自ら解決できる力を育成していきたいと考えています。みんなのコードは、引き続き、教育現場の声に耳を傾け、企業と連携し、テクノロジーによって変わり続ける社会に相応しい情報教育のあり方を示していきます。
キンドリル社会貢献の取り組み
キンドリルの社会貢献プログラムは、「未来志向型の教育」、「気候変動への対策」、「インクルーシブエコノミー」に重点領域をおいています。そして、日本ではIT人材の不足が深刻さを増しており、学生や教員のITスキル向上を支援することの重要性が高まっています。2023年度は、キンドリルが支援する団体の1つとして、みんなのコードが採択されました。
【本件に関する報道関係者からのお問合せ先】
特定非営利活動法人みんなのコード Code for Everyone
メール:pr@code.or.jp