みんなのコード代表理事の杉之原です。
私は、昨年7月、みんなのコード10周年の節目に創業者の利根川から代表理事のバトンを受け取りました。
代表理事になる前から取り組んでいたことのひとつに、組織の地図づくりがあります。試行錯誤を重ね、作成に丸3年を要したインパクトマップ(ロジックモデルを少しアレンジしたもの)を今年4月に公開しました。
前回の記事「ロジックモデル作成に3年。組織の「対話沼」の始まり」では、ロジックモデルとは何で、なぜ作成することになったかの背景を書きました。この記事では、ロジックモデルの作成に費やした3年間を振り返ってみたいと思います。
3年間の作成プロセス
まずは、3年間のタイムラインです。大きく「ロジックモデルを自力で作ってみた期」と、「問い直し&インパクトマップ作成期」があります。

いずれの時期も、メンバーに使われるロジックモデルにするため、経営チーム、メンバー、理事会との対話を往復しながら作成しました。
- 経営チームでドラフトを作成(回によってメンバーにゲスト参加してもらった)
- 全社オフサイトや1on1を通してメンバーの反応や声を反映
- 理事会で大きな方向性をわいがや
ロジックモデルを自力で作ってみた期(2023年〜2024年)
すでにある情報をかき集めて整理すれば、サクッと作れるでしょうと思っていたのですが、2023年4月に経営チームキックオフから始まった議論は、「目指す社会像」を含む前提の部分に約11時間の議論を費やす事態に発展しました。そのくらい、ビジョンをブレイクダウンした何か、がなかったのだと振り返ります。議論には、たびたび奈良さん(ソーシャル・イノベーション・パートナーズ(SIP) ヴァイス・プレジデント)に壁打ちや交通整理に入っていただきました。
文字どおり暗中模索の中で、同年末にようやく背骨となる骨子が見え、翌2024年には理事会も含めて議論を重ねました。現場で使われるロジックモデルにしたいという思いがあったため、手を挙げてくれたメンバー6名との1on1を重ねて、表現を研ぎ澄ませていきました。そうして2025年1月、全社オフサイトでのワークショップを経て、ver1のロジックモデルが完成しました。

このロジックモデルには、こだわりが詰まっています。
みんなのコードの事業活動である「学校教育事業」と「クリエイティブハブ事業」に加えて、事業活動の土台となる「インクルーシブな情報教育・機会づくり」という3本目の柱を加えました。
また、みんなのコードは、ビジョンに「国にする」、バリューに「しくみにしよう」という表現がありますが、その意思を表すため「情報教育そのもののアップデート」「地域に根付いた持続的な仕組みづくり」というループを追加しました。
最後に、学校教育事業とクリエイティブハブ事業(地域づくり)が影響しあって目指す社会像を実現することを表現するために、事業間を結ぶ点線を追加しました。
問い直し&インパクトマップ作成期(2025年〜2026年)
作成したロジックモデルを土台とした中期経営計画を作成するため、PwCさんが実施している戦略的プロボノ人材育成プログラム「ソーシャル・インパクト・イニシアチブ」に応募しました。10周年の節目に代表理事を交代するタイミングでもあったため、少しでも道筋を見出したいという思いも強かったと思います。プロジェクトには、PwCさんのプロボノ6名が集まってくださいました。
一度完成したと思っていたロジックモデルでしたが、PwCさんの皆さんとの会話の中で「ビジョンを実現するためのミッションや、ビジョン・ミッションから逆算した状態目標が抜けているのではないか」「現在のロジックモデルは、既存事業からの整理ではないか」という全うなご指摘をいただき、作成したロジックモデルを1回脇において、ミッションの策定から議論することになりました。

インパクトマップは、ロジックモデルの枠組みを土台にしながら、「ミッション」「ミッションを実現するために必要なアクション」で始まるのが特徴です。ミッションをベースにしたため、投入資源や事業ごとの記載をなくしました。
私たちの活動は、創業者の利根川が2015年に開催したプログラミングワークショップでの、子どもたちの生き生きとした姿から始まりました。テクノロジーを使って創作を楽しむ子どもの姿を全国に広げるため、必要なことをアクションする。事業という線引きをなくしたほうが、ビジョンの実現に向けてアクションの幅が広がるように思っています。
完成したロジックモデルのアレンジ版には、「インパクトマップ」という名前をつけました。ロジックモデルは、インパクトマップをもとに、事業や案件ごとに作成するという整理にしました。
良かった点
試行錯誤を重ねながら進めてきたロジックモデルの作成ですが、学びと改善できる点を振り返ってみます。まずは良かった点です。
①対話プロセスを重視した
「必要だからとにかく作る」「誰かが作ったものを下ろす」のではなく、経営チーム・メンバー・理事会の対話を行き来したことで、少なくとも私は、こだわりと思いある仕上がりになりました。
②いただいた問いに向き合った
次回詳しく書きたいと思いますが、作成の過程で、外部の方々からハッとするような重要な問いをいくつもいただきました。それらを社内に持ち帰り、ひとつずつ議論を重ねました。壮大な対話沼にハマりましたが、すべて必要な議論だったと思います。
③事業の枠を超えたインパクトマップへアレンジできた
PwCプロボノチームからの「既存事業の整理にとどまっていないか」という客観的な問いかけを受け止めたことで、ビジョン・ミッションの実現をベースとした「インパクトマップ」へ切り替えることができました。結果として、事業という線引きを取り払ったことで、今後の新規プロジェクトや新しいアクションの「余白」をつくることができたのではないかと感じています。
課題となった点
次に、課題の振り返りです。
①本当の課題は何か
根本を辿ると、私が見出したかったのは「ロジックモデル」そのものではなく、「経営の見通し」でした。しかし、ロジックモデルという枠組みにとらわれてしまい、途中で「前提となるミッションや状態目標が不足している」という根本的な問題に気づいて議論をやり直すことになりました。
②「ミッションがない状態」に向き合う
全体像の作成に3年かかった大きな理由は、「ミッションを作らない状態」を良しとしていた創業者と私の姿であったと振り返ります。ちなみに、ミッションを早く作ったほうが良かった、という振り返りではありません。キチっとした枠組みを持たない状態だったからこそ、ニーズに早く対応して事業を展開し続けることができてきたと捉えています。
そうであるからこそ、本来一番労力がかかり、エネルギーを要するミッションの議論をしないまま、表現できそうなロジックモデルに手をつけたことが、長い回り道を生んだのだと振り返ります。
次回は、ロジックモデルの作成にあたって向き合った重要な問いと葛藤について書きたいと思います!

