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ロジックモデル作成で出会った5つの大切な問いと葛藤

みんなのコード代表理事の杉之原です。

私は、昨年7月、みんなのコード10周年の節目に創業者の利根川から代表理事のバトンを受け取りました。

代表理事になる前から取り組んでいたことのひとつに、組織の地図づくりがあります。試行錯誤を重ね、作成に丸3年を要したインパクトマップ(ロジックモデルを少しアレンジしたもの)を今年4月に公開しました。

前回の記事「ロジックモデル作成で陥った罠。「既存事業の整理」から「インパクトマップ」へ」では、ロジックモデルの作成に費やした3年間を振り返りました。この記事では、この間に向き合った大切な問いと葛藤について書きたいと思います。

▲完成したインパクトマップ

なぜ「みんなのコード」でなければいけないのか

ロジックモデルの作成初期では、不定期で奈良さん(ソーシャル・イノベーション・パートナーズ(SIP) ヴァイス・プレジデント)に議論に入っていただきました。奈良さんには、要所要所で、私たちのアイデンティティを揺さぶる問いをいただきました。

「なぜ、他の誰でもなく、みんなのコードでなければいけないのか」

テクノロジーは子どもの可能性を広げる道具であるはずだが、放っておけば格差を広げる装置にもなるという構造を確認し、「みんなのコードが活動したにも関わらず、変わらなかったら悔しいギャップは何か」という問いに変換して議論を行いました。

なぜ、学校にこだわるのか

「変革のハードルが高い学校教育の構造に挑むのは、本当に筋が良いやり方なのか」という問いもいただきました。

みんなのコードの活動が大きく加速した背景には、元学校教員のメンバーたちの参画があります。学校教育のシステムの中から変えられることには限界がある。だからこそ残りの人生をかけて、外から学校を変えることにも挑戦したい。そんな彼らの思いが、みんなのコードの活動の根底にあります。

みんなのコードは、すべての子どもに仕組みとして出会いをもたらす「学校」という場と、日々子どもと向き合う「先生」という存在の可能性を諦めないという思いを確認しました。

一方で、学校という枠組みだけではサポートしきれない子どもたちの場所として、私たちが運営する「地域のデジタルソウゾウ拠点」があります。学校の少し外側にも学びの機会を創出することで、学校と地域社会が相互に支え合う環境を築くこともやる。事業領域を改めて見つめる問いとなりました。

社会課題の解決か、子どもの目の輝きか

インパクトマップ作成期に伴走いただいたPwCコンサルティングの皆さんにも、いくつもの気づきをいただきました。その中のひとつが「社会課題の解決か、子どもの目の輝きか」です。

一般的な経営計画は市場環境から逆算しますし、ロジックモデルも、解決すべき社会課題からバックキャスティングして作成していくのが定石です。しかし、みんなのコードは、どうも特定の社会課題からバックキャスティングするということに抵抗を感じる節があるようです。(もちろん、事業やプログラムごとには試みます。)

なぜなら、私たちが向き合いたいのは、学校教育を取り巻く複雑に絡み合った構造的課題であり、何か一つだけを課題として選択することがなかなか難しいからです。

もとをたどれば、みんなのコードの始まりは、社会課題を解決するためではなく、創業者の「テクノロジーを使って試行錯誤する子どもの姿を全国に広げたい」という純粋な衝動でした。そういう意味では、出会った先生方や子どもの前にある課題の小石をひとつずつ取り除いていく、そういう性質が強いのではないかということを確認しました。

この議論を経て、私たちは特定の課題からの逆算ではなく、「みんなのコードが介在することで、子どもに起きたら嬉しい変容のステップ」をベースに、その変容を阻む課題を洗い出し、ビジョンを実現するためのコアとなる3つのミッション作りました。

▲作成したミッションをテーマにしたワークショップの様子

すべての子どもか、特定の子どもか

これまでの事業活動の中で、私たちが大切にしてきた問いのひとつに、「すべての子どもに届いているか」というものがあります。この問いがあるからこそ、自身の視野の狭さに気づくことができています。

一方で、「『すべての子ども』という表現は範囲が広すぎて、世界平和を掲げるようなものではないか」「ターゲットを絞らないのは逃げではないか」という、至極真っ当なツッコミをたびたびいただき、「経営者として選択することも覚悟なのではないか」と強く迫られる瞬間もありました。

葛藤の末、私は「すべての子ども」を変えない決断をしました。営利企業も行政も届きにくいエアポケットにいるエリアにこそ機会を届けたいという思いは、私たちのアイデンティティであり、これを絞ってしまっては『「みんな」のコード』ではなくなってしまうからです。

これに伴って、みんなのコード全体を包含したロジックモデルを描くことを諦め、代わりに柔軟な「インパクトマップ」という形で全体像を整理し、具体的なターゲットの設定は事業や案件ごとに描くという整理をすることにしました。

▲作成したミッションをテーマにしたワークショップの様子

果たして、子どもの変容は計測できるのか

ロジックモデルを検討する中で、最後まで見えなかったのが「子どもの変化をどう測るか」という問題でした。

私たちが実現したい社会像は、「すべての若者がテクノロジーを使った試行錯誤を通じて自らの可能性を信じ、社会や自身の未来を変えるために動いている社会の実現」であると言語化しましたが、どんな指標を置けば進捗を測れるでしょうか。そもそも学びの価値は、大人になって初めて気づくことも多いのです。

一方で、1回の授業やワークショップといった活動の中で、先生や子どもに何も変化が起きなかったとしたら、それは普通に悔しい。「またテクノロジーを使って何かやってみたい」と思えたかどうかが、私たちが生み出すべき最小単位の成果なのではないか。そんな議論を繰り返しました。

引き続き、事業や案件ごとにではありますが、子どもたちの「またやってみたい」という意欲の芽生えや自己効力感の高まり、そして一人ひとりの変容エピソードを集めながら、評価のあり方を模索しています。

ここまで、ロジックモデルの作成を始めてから出会った大切な問いと葛藤について書いてみました。次回は、インパクトマップを作った後の活用方法や感じていることについて書きたいと思います!

(関連記事)
第1回:ロジックモデル作成に3年。組織の「対話沼」の始まり
第2回:ロジックモデル作成で陥った罠。「既存事業の整理」から「インパクトマップ」へ

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